Research Highlights

マイノリティ・リポート

Nature Reviews Cancer

2005年5月1日

アフリカ系アメリカ人女性は、白人女性と比べて乳癌の発生率は低いが、乳癌死亡率は高い。Rowan T. Chlebowskiらはプロスペクティブな研究を実施し、この最も有力な理由が、アフリカ系アメリカ人女性の大部分における乳癌悪性度の高さであることを突き止めている。

Chlebowskiらは、少数民族を対象とした乳癌の危険因子の分布の差が文献であまり注目されていないことに取り組もうとした。その目的のために、Women's Health Initiative (WHI)に参加した閉経後女性156,570例のデータを解析した。

Chlebowskiらが算出に用いたのは、データ採取時の年齢、初潮年齢、過去の乳房生検、初産年齢および第一度近親以内の乳癌の家族歴など、立証済みの危険因子(いずれも、よく用いられる乳癌リスクのGailモデルに含まれている) である。このほか、所得水準、教育水準、飲酒および体容量指数(BMI)といった推定上の危険因子も考慮している。

中央値にして6.3年間にわたるフォローアップ後に乳癌と診断されたのは3,938 例であった。年齢を調節した少数民族グループ全体の発生率は、白人女性よりも低かった。しかし、乳癌の危険因子について調節すると、アフリカ系アメリカ人に明らかな低発生率および高死亡率を除き、そのいずれにも差が認められた。Chlebowskiらは、この民族グループの腫瘍は、予後不良(すなわち高悪性度(低分化)かつエストロゲン受容体陰性)あることが多いとしている。実際、アフリカ系アメリカ人女性の乳癌は、1/3近くがこの表現型である。

この研究から学べることは何か。Chlebowskiらは、広く用いられている Gailモデルに、民族によって異なる危険因子を追加すれば、少数集団を対象にしたリスク評価の正確さが増すのではないかとしている。さらに、これまでは、アフリカ系アメリカ人女性の乳癌発生率が低く、死亡率が高いのは、この集団があまり医療を利用せず、マンモグラフィの頻度も低いことが影響していると考えられていたが、Chlebowskiらは、遺伝的危険因子の影響力の方がより強いと見込まれること、今後、これをさらに大規模かつ包括的な研究によって検討する必要があることを明らかにしている。

doi:10.1038/nrc1619

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度