Research Highlights

細胞を冷静にする錠剤?

Nature Reviews Cancer

2005年7月1日

短い二本鎖RNA (siRNA)は、動物モデルの遺伝子発現を「ノックダウン」するのに効果的であり特異性も高い。Tim DevlingらがKEAP1に対するsiRNAが他に類を見ないクラスの癌化学予防薬となりうると報告しているように、この分子制御法は現在、その臨床的重要性が増しているものと思われる。

化学予防による新生物疾患の抑制は、きわめて理想的な目標であり、これまでいくつかの戦略が考えられてきた。たとえば、化学予防的遮断薬はヒト細胞の細胞保護遺伝子の発現を増大させる。この遺伝子には、NAD(P)H:キノン酸化還元酵素1 (NQO1)およびグルタチオン(GSH)トランスフェラーゼといった薬物代謝酵素のほか、GSH合成を促進するグルタミン酸システインリガーゼの触媒サブユニット(GCLC)および修飾サブユニット(GCLM)といった抗酸化遺伝子が含まれる。しかし、化学予防効果を発揮するには、このような化学物質が細胞の還元-酸化(レドックス)ストレスを誘導しなければならず、それには有害性が見込まれる。

このようにして調節される遺伝子は、そのプロモーターに抗酸化応答エレメント(ARE)をもっており、AREによる赤血球系核因子2 p45関連因子2 (NRF2)をもつ複合体の動員に反応して、その転写が刺激される。NRF2は、レドックスストレスおよび化学予防的遮断薬治療に反応して核に蓄積する。

レドックス感受性のあるkelch様ECH関連タンパク質1 (KEAP1)は、CULLIN3?ROC1ユビキチンリガーゼに対するNRF2特異的アダプター蛋白質である。生体恒常性が維持されていれば、これがプロテアソームによるNRF2の分解を促進し、それによってAREを含む遺伝子のスイッチをOFFのまま維持する。自然なレドックスストレスを受けているか、または化学予防的遮断薬を投与されていると、KEAP1もはやこの役割を果たさず、NRF2は安定化し、AREを含む遺伝子のスイッチはONになる。 Devlingらはこのことから、siRNAを用いてKEAP1値を特異的に抑えると、ストレス不在下でAREを含む遺伝子の転写が活性化されるかどうかを検証しようとした。

二本鎖21ヌクレオチドsiRNAは、ヒト角質細胞に移入すると、KEAP1 mRNAが正常値の30%未満に上手くノックダウンされるようデザインしたものである。これによりNRF2がアップレギュレートされて、NQO1値、GCLC値およびGCLM値のほか、アルドケト還元酵素1C1/2および細胞内グルタチオンの値も上昇した。

Devlingらは以上のことから、KEAP1に対するsiRNAは、酸化ストレスに対するヒト細胞の前適応を誘導する方法として、価値があるのではないかとしている。これは、有害性が見込まれる化学物質に細胞を曝すことなく、変性疾患を治療するのに役立つと思われる。

doi:10.1038/nrc1663

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