Research Highlights

安定性チェック

Nature Reviews Cancer

2005年8月1日

核小体タンパク質ヌクレオフォスミン(NPM)は、骨髄異形成症侯群(MDS)などいくつかのヒト血液腫瘍で変異または転座している。Pier Paolo Pandolfiらは、マウスを用いてNPM の役割を検討し、それがマウス胚形成に不可欠であること、ヒトMDSの成因における役割をも担っている可能性があることを明らかにしている。

胚子期第12日前後では、Npm1のノックアウトは致死的である。研究によると、その原因の少なくともひとつは、前脳および造血器の滞りない発生にNPMが必要とされていることにある。Npm1-/-組織におけるアポトーシスの開始(中心体異常による)およびリボソーム生合成欠損には、おそらくこの表現型に寄与すると考えられるp53の著明なアップレギュレーションが伴っていた。

細胞レベルでみると、Npm1-/-細胞はp53を介して四倍体が原因の細胞周期停止を来すほか、中心体増幅および紡錘体欠損の程度が大きく、ゲノム安定性の維持にはNPMがきわめて重要であることが示されている。しかも、類似したゲノム欠損がNpm1+/-細胞に認められ、in vitroでもin vivoでも癌細胞に転換しやすくなることから、この機能にはNpm1遺伝子量が重要である。Pandolfiらはこのため、NPM欠乏による遺伝子不安定性(無制限な中心体の複製を来して異数性となる)が、腫瘍形成に寄与しうるのではないかと考えている。Npm1+/-細胞は、NPM1遺伝子座の転座または削除というヒト癌に起こる状況を反映したものであることから、上記のことは特に重要である。

NPMがハプロ不全であることがわかっているため、Pandolfiらは、Npm1+/-マウスの造血が影響を受けているかどうかを突き止めようとした。このマウスの血液および骨髄を分析したところ、確かに、ヒトMDSの成因を彷彿とさせる形成異常の特徴がいくつか認められた。5番染色体上のNPM1遺伝子座は、MDS患者に構造異常が現われやすいことから、Pandolfiらは、NPMの機能不全がこの多遺伝子疾患の成因に一枚かんでいるのではないかとしている。

doi:10.1038/nrc1686

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