Research Highlights

Boveriの肩をもつ

Nature Reviews Cancer

2005年11月1日

四倍体になる有糸分裂異常が発癌を助長するという考えは、100年以上前にTheodor Boveriが提唱したもので、その後に実施された多数の研究によってこの考え方が裏付けられてきたが、これまで難題であったことがわかっている。 Natureに掲載された研究では、David Pellmanらがp53ヌル細胞の二倍体と四倍体とを直接比較するシステムを考案し、四倍体細胞の方が発癌の可能性が高いことを明らかにしている。

遺伝子をマッチさせた四倍体細胞と二倍体細胞を作製するため、Pellmanらはまず、p53ヌルマウス乳腺上皮細胞(MMEC)に手をつけた。p53の消失については以前、さまざまな種類の腫瘍細胞にみられる四倍性との因果関係が明らかにされている。Trp53+/+マウスまたはTrp53-/-マウスから単離した一次MMECを細胞骨格破壊物質であるジヒドロサイトカラシンBで処理すると、細胞質分裂が遮断された。次に、蛍光活性化細胞選別により、二倍体(染色体数40)および四倍体(染色体数80)の細胞を単離している。

Pellmanらの観察によると、二倍体および四倍体の培養p53ヌル細胞は、ほぼ同じ速度で増殖したが、Trp53+/+細胞が繁殖可能な四倍体を形成することはなかった。Pellmanらはp53ヌル細胞をさらに分析し、二倍体の集団にも四倍体の集団にも全染色体異数性異常は生じるが、四倍体由来細胞の方が異数性異常の発生率が高いことをも明らかにした。また、この細胞の多くには、著しい染色体再構成が認められた。

四倍体が形質転換に及ぼす影響はどのようなものだろうか。p53ヌル細胞は二倍体も四倍体も、最初は足場非依存性に増殖することができなかった。しかし、変異誘発物質7,12-ジメチルベンツアントラセン(DMBA)で両細胞を処理し、さらに腫瘍プロモーター12-O-テトラデカノイルホルボール-13- アセテート(TPA)に曝露すると、四倍体細胞のみに軟寒天内での増殖能が現れた。ヌードマウスに注入すると、この細胞はその後2週間もしないうちに腫瘍を形成した。実際、p53ヌルの四倍体細胞は、DMBA、TPAのいずれかで処理せずともin vivoで腫瘍を形成することができ、未処理の四倍体細胞を注入した動物39匹のうち、10匹の注入部位に腫瘍が発生した。これに対して、p53ヌルの二倍体細胞を注入した部位に腫瘍は形成されなかった。

四倍体由来の腫瘍細胞の遺伝分析からは、非相互転座および二動原体染色体が豊富に認められると同時に、余剰中心体、数的および構造的な染色体異常が明らかになった。検討した腫瘍9カ所いずれにも、ヒト乳癌での過剰発現が多いマトリックスメタロプロテイナーゼ遺伝子10個のクラスターをもつ9番染色体領域の増幅が認められたのには、興味がもたれる。

Pellmanらは、細胞質分裂の一時的な遮断が遺伝学的に不安定な四倍体細胞の形成につながり、MMECの腫瘍形成が助長されるとの結論を導いている。しかし、正常細胞に四倍体が生じる頻度とその原因とを明らかにするには、さらに実験を重ねる必要がある(参考文献参照)。

doi:10.1038/nrc1758

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