Research Highlights

調節T細胞を抑制する

Nature Reviews Cancer

2006年1月1日

癌患者には調節T (TReg)細胞が多数存在しており、これが効果的な抗腫瘍免疫応答を抑制している。Jens Dannullらは、TReg細胞数を減じることを目的とした標的療法によって、腫瘍ワクチンに対する患者の反応が改善しうるかどうかを検討した。この前臨床試験の患者数は少ないが、試験成績には期待がもてる。

TReg細胞はCD4+T細胞で、通常は自己免疫の発生を抑制している。この細胞には、インターロイキン2 (IL-2)α鎖受容体であるCD25が高レベルで発現し、マウスモデルを用いた以前の試験では、CD25を狙い撃ちすることによって、TReg細胞が枯渇することが明らかになっている。この試験でDannullらは、進行した腎細胞癌および卵巣癌の患者のTReg細胞を特異的に殺滅する手段として、ジフテリア毒素の触媒領域および膜輸送領域と結合したヒトIL-2(DAB389IL-2)を用いている。

Dannullらはまず、DAB389IL-2が選択的にTReg細胞を枯渇させるかどうかを明らかにするため、健常ドナーおよび癌患者双方のヒト末梢血細胞に対するin vitro実験を実施した。CD4+CD25high細胞は選択的に除去されたが、CD25の発現レベルが低〜中程度のほかのT細胞(メモリーT細胞など)に影響があったことを示す証拠はなかった。しかし、活性DAB389IL-2の存在はエフェクターT細胞の応答をも抑制したことから、DAB389IL-2は、ワクチンを接種する前の状態でのみ使用できることがわかった。

この臨床試験では、患者7例にDAB389IL-2を4日間にわたって投与した後に、腫瘍細胞RNAを移入した樹状細胞より成るワクチンを接種している。DAB389 IL-2によって循環中のTReg細胞数が有意に減少したため、ワクチンを投与した際には、循環中の細胞傷害性抗腫瘍T細胞数がワクチン接種のみの患者4例よりも増大した。

Dannullらは臨床的影響力のある抗腫瘍免疫の獲得を視野に入れつつ、この試験が癌患者を対象にしたTReg細胞枯渇戦略を改善し、明確化するための基礎となることを期待している。

doi:10.1038/nrc1790

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