Research Highlights

新規標的、見つかるかも

Nature Reviews Cancer

2006年5月1日

癌の分子標的は特異的である必要があり、健常細胞が損傷を受けることがあってはならない。Louis Staudtらは、このような特異的標的を発見するためのRNA干渉(RNAi)スクリーンを考案し、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)を対象に、それを検証した。

これまで癌のRNAiスクリーンのほとんどでは、細胞が傷害作用も静止作用も受けないようにしようとするため、腫瘍抑制因子が発見されてきた。この新しいスクリーンは癌細胞を殺滅する短いRNAを探求するものであることから、癌遺伝子が発掘される。

Staudtらは、レトロウイルスベクターで誘導性RNAiコンストラクトのライブラリを作成し、遺伝子約2,500個を標的にした。各コンストラクトは、追跡が可能なように、異なったバーコード配列を有する。ライブラリを癌細胞系に導入したところ、これによって得られたトランスジェニック細胞の半数に、短いRNAが誘導された。このバーコード配列を有するマイクアレイを用いて、2つの集団で各コンストラクトの存在量を測定した。誘導した集団における各コンストラクトの存在量が対照よりも少なければ、そのコンストラクトが細胞の生存に影響を及ぼしていると考えて間違いない。

Staudtらは特異的な癌遺伝子を探求するため、4つ(2つが活性型、もう2つが胚中心型)のB細胞様DLBCL系統についてスクリーニングを実施し、一方の型の両系統ではなく、もう一方の型の両系統の生存率を低下させた遺伝子のノックダウンが特異的であり、健常細胞のほとんどに影響を及ぼすことなく標的となりうると判断した。

この方法で明らかになった最も有望な標的は、CARD11 (核因子κB (NFκB)活性化に関与する)で、そのノックダウンは活性化B細胞様DLBCL細胞にのみ影響を及ぼす。Staudtらは、グリーン蛍光タンパク質 (GFP)を用いてノックダウンをモニタリングしたり、マイクロアレイを用いてCARD11ノックダウンによって生じるNFκB経路遺伝子の発現レベル低下を分析したりするなど、さらに実験を重ねてこの標的の妥当性を確認した。

これにより、CARD11がB細胞性リンパ腫で重要な役割を担っており、分子標的となりうることがわかったほか、新しい標的発見法も明らかになった。

Staudtらは、このようなスクリーンを利用し、それぞれの種類で増殖および死の原因となるタンパク質に基づいて癌を分類してはどうかと提案している。また、それによって今までこのような過程への関与が知られていなかった経路が明らかになる可能性もある。これは創薬の標的選択に役立つと同時に、各種癌の根底にある変異を検索する一助ともなる。

doi:10.1038/nrc1900

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