Research Highlights

loxP導入fox

Nature Reviews Cancer

2007年3月1日

FOXO(フォークヘッドボックスO)ファミリー転写因子の腫瘍抑制因子としての役割は既に提案されているが、その直接的な証拠はない。Ji-Hye Paik、Ron DePinho、Diego Castrillonらは、マウスを癌になりやすい状態にするには、FOXOが3つとも消失している必要があることを明らかにしている。

Paikらは、胚致死を回避しようと、誘導性のCre-lox系を用いてFoxo1、Foxo3、Foxo4 をさまざまな組み合わせでノックアウトしている。全3遺伝子が欠失している体細胞が広く分布(Foxo1;3;4 ヌルマウス)していると、胸腺リンパ腫および血管腫が引き起こされ、この系統では細胞増殖の増大および生存がみられた。

Paikらは、血管腫の発生にかかわる機序を検討するため、系統全体にわたってFOXOが広く欠失していても、内皮細胞密度が高い臓器は(全部ではないが)多いという観察結果に着目した。転写プロファイリングでは、肝内皮細胞(血管腫が発生した組織)と(血管腫は発生しなかった)肺内皮細胞とでFOXO 欠失後の発現が異なる遺伝子が突き止められた。プロモーター領域のFOXO-結合要素を詳細に調べ、3つの種(マウス、ヒトに加え最低でも1種)で保護されている結合要素を含むものに特に注意しながら、その遺伝子138個の結果リストから余分なものを削除していったところ、FOXO結合要素が少なくとも1 つ含まれている遺伝子が21個見つかった。Paikらは、FOXO結合要素が最もよく保護されている遺伝子sprouty2(Spry2)に焦点を当てた。これは、受容体チロシンキナーゼの負の調節因子である。Spry2 はFOXOの直接の標的であることが確認され、初代肝内皮細胞のsprouty2タンパクをshRNAでノックダウンすると、Foxo1;3;4ヌルの内皮細胞の表現型と同じく、細胞周期の進行が速まり、アポトーシスが減少した。また、Foxo1;3;4ヌルの内皮細胞のsprouty2がそれ以上減少しても、さらなる影響は認められなかった。

Foxo1;3;4ヌルマウスの腫瘍の種類は思ったほど多くないが、この遺伝学的試験からは、前述の遺伝子が腫瘍抑制因子であること、in vivoでのFOXO機能は状況特異的であり、細胞の種類および組織に依存していることがわかる。

doi:10.1038/nrc2094

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