Research Highlights

いつもの容疑者ではない

Nature Reviews Cancer

2007年4月1日

癌変異プロファイリングの目的は、個々の腫瘍検体のようすを分子レベルで明らかにし、医師が診断精度を高め、各患者に合わせた最善の治療ができるようにすることである。しかし、それぞれの癌に寄与する変異の同定には費用および複雑性が伴うため、診療現場への道は険しい。最近発表された2件の試験は、この問題の解決に向けた重要な一歩となっている。

癌遺伝子の変異は無作為に起こるのではなく、特定の領域に起こる頻度が高いことから、L Garrawayらは癌細胞の全ゲノムをスキャニングする代わりに、その領域に焦点を当てることにした。ここでは、腫瘍17種の検体1,000個を対象に、ハイスループットの遺伝子タイピング法を用いて(癌遺伝子17個に影響を及ぼす)既知の変異238個の頻度および分布が分析されている。1つ大きな成果は、分光法に頼るこの遺伝子タイピング法が、よく用いられる配列決定法と比べて感度、費用効果ともに高い変異プロファイルをもたらしたことである。変異は分析した癌遺伝子のほとんどに見つかり、その頻度は以前の報告と一致していた。さらには、これまで報告のなかった種類の腫瘍にも変異が見いだされ、標的となりうる稀な変異をこの方法によって同定できることがわかった。

もう1つの難題は、癌ゲノムの複雑性を正確に知ることである。癌ゲノムには、腫瘍の増殖および発生に不可欠であるために正の淘汰を受ける「ドライバー」変異と、増殖上の利益をもたらさないために淘汰を受けない「乗客」変異の2種類の変異がある。では、どうすれば「乗客」変異を同定し、最終的に大規模な再配列スクリーニングから除外することができるのだろうか。A FutrealとM Strattonらは、起源が異なる腫瘍検体210個について体細胞変異の数およびパターンの調査に乗り出し、腫瘍形成プロセスとのかかわりを明らかにした。そして、癌に最も多い変異遺伝子の中のタンパク質キナーゼ遺伝子518個のコーディングエキソン配列を決定し、1,000個超の変異を同定した。腫瘍間における変異固有の特徴は、細胞の起源、DNA修復能、発癌物質への曝露歴によって大きく異なった。

「ドライバー」変異と「乗客」変異とを識別するため、FutrealとStrattonらは、非同義(アミノ酸を変化させる)または同義(タンパク質配列に対する作用はない)のいずれかであることを確認した一塩基置換921か所に対してアノテーションを行った。そして、同義変異に対する非同義変異の比が偶然の予想よりも高い場合を正の淘汰の結果、ひいては「ドライバー」変異の存在を示すものとした。これに基づけば、変異763個は「乗客」変異に分類され、癌にみる変異が多い遺伝子ファミリーを集中的にスクリーニングしても、癌プロファイリングで同定される変異のほとんどは癌の発生に関与していないことがうかがえる。同時に、「ドライバー」変異の数は以前の予想よりも多く、また興味深いことに「ドライバー」変異をもつ遺伝子のほとんどは、それまで腫瘍形成に関与しているとは考えられていなかった。これは、通常疑われている以上に多くの癌遺伝子が存在することを示す。

以上を総合すると、上記両試験で示された方法を用いれば、腫瘍における最も重要な変異を効率的かつ費用効果的にスクリーニングする機会が開かれるはずである。

doi:10.1038/nrc2117

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