Research Highlights

メチル化料理法

Nature Reviews Cancer

2006年3月1日

Helicobacter pylori 菌は、特に胃癌全体の少なくとも半数の原因であることから、胃にとってはよくない知らせである。しかし、H. pylori がどのようにして癌を引き起こすかは不明である。Maekitaらは最新の論文で、胃粘膜でのH. pylori と異所性DNAメチル化との関係を探っている。

Maekitaらは、個体をH. pylori感染の有無で分け、特定のCpG島でDNAメチル化レベルを測定した。CpG島は、癌で異所性にメチル化することが多く、胃癌細胞の腫瘍抑制因子(特にINK4a (サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2Aまたはp16でも知られる)、CDH1 (Eカドヘリンでも知られる)およびMLH1)は、変異を来たすよりもDNA メチル化によって不活化することの方が多い。

Maekitaらは、メチル化特異的PCRを用いてゲノム8領域のメチル化レベルを明らかにした。あるCpG島の2領域はINK4aと関係があり、CpG島の残る6領域は、LOX (腫瘍抑制因子でもあるリシルオキシダーゼ)、HRAS様抑制因子およびTHBD (いずれも腫瘍抑制因子と推定される)、p41ARC (アクチン関連タンパク質-2/3複合体、サブユニット1Bでも知られる)、HAND1 およびFLNC (胃癌でのメチル化頻度が高い)と関係があった。

Maekitaらは、H. pylori に感染している(が胃癌ではない)個体は、CpG島8個のいずれでも、異常メチル化のレベルが高いことを突き止めた。胃癌(であるがH. pylori感染はない)患者にも、同じCpG島の異所性メチル化が認められた。このことからMaekitaらは、H. pylori は胃粘膜に異所性メチル化を誘導することによって、癌のリスクを増大させているのではないかと考え、これに考えられる機序を考察した。以前の試験からは、de novo DNAメチル化がH. pylori 感染の特徴である細胞増殖によって誘導されることがわかっている。Maekitaらはさらに、強い慢性炎症も原因ではないかとみている。機序が何であれ、以上の所見からは、特定のCpG島でのメチル化レベル測定を胃癌のリスク評価方法として利用できることがわかる。

doi:10.1038/nrc1828

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