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伝達者をやっつける

Nature Reviews Microbiology

2004年4月1日

多くの共生細菌は、共有する環境の中で競合する細菌の優位に立つために抗生物質を産生する。今回、Lian-Hui Zhang らのグループは、ある種の細菌は菌体数感知シグナルを阻害することにより他の種の細菌の毒性を低下させるという、新しい機構を明らかにした。 N-アシルホモセリンラクトン(AHL)を利用した菌体数感知は、関連した細菌間で遺伝子発現を調整するための情報伝達に広く用いられている。AHL分解酵素を生産する細菌もあることから、この酵素がAHLシグナル伝達に依存する細菌との競合に利用できるかもしれないことが示唆される。しかし、これまでにこの興味深い考えを支持する証拠は見つかっていなかった。 害虫の生物学的防除に広く用いられているBacillus thuringiensisは、AHL分解酵素であるAHL-ラクトナーゼを発現する。Zhang らはB. thuringiensisがAHLを利用してシグナル伝達を行う植物病原菌であるErwinia carotovoraの増殖を阻害できるかを調べた。これら2つの細菌を共培養すると、病原菌の増殖は影響を受けないが、E. carotovoraのAHL蓄積は阻害された。AHLによるシグナル伝達の阻害がE. carotovoraの病原性に影響を及ぼしているかを解析するために、薄切りにしたジャガイモに両細菌を接種した。E. carotovoraにより生じる軟腐症状は大幅に減少したことから、B. thuringiensisが病原菌の毒性を抑制することを示唆した。 このことを確認するために、著者らはジャガイモの薄片に、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するプラスミドで形質転換したE. carotovoraを接種した。薄片をあらかじめB. thuringiensis懸濁液で処理しても、GFPを発現する細菌数は、水のみで前処理した対照に比べ、わずかに減少したのみであったが、毒性には顕著な効果が見られた。対照の薄片ではE. carotovoraが広がり軟腐症状が生じたのに対し、B. thuringiensisで前処理してあると、病原体は接種部位にとどまり、感染に至らなかった。 E. carotovoraの毒性を抑えるためにAHL-ラクトースが必要であることを証明するために、Zhangらはこの酵素を産生しないB. thuringiensis変異体を作成した。この変異体はE. carotovoraにより生じる軟腐症状を阻止できなかった。 この研究から競合する細菌間の相互作用の新しい機構を明らかにし、この機構を「シグナル干渉 (signal interference)」と命名した。AHL分解酵素を発現するB. thuringiensisなどの細菌は細菌性植物病原体の防除に有用であろうことから、今回の成果は生物学的防除に興味深い意義がある。

doi:10.1038/fake740

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