Highlight

IL-17を産生するT細胞を全く新たに生成させる

Nature Reviews Immunology

2006年4月1日

ナイーブCD4+T細胞からインターロイキン17(IL-17)を産生するT細胞をde novoに分化させる機構は完全に解明されたわけではないが、IL-23が関与していると考えられている。今回、Immunityに発表された新たな研究により、こういうT細胞の生成に、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)が炎症誘発性サイトカインであるIL-6と共に重要な役割を持つことが明らかにされた。

自然発生的に生じるCD4+CD25+調節性T(TReg)細胞サブセットは、病原性T細胞を抑制することにより免疫病を防止するが、in vitroではナイーブCD4+T細胞の増殖とIL-2産生を抑制する。しかし、B Stockingerらは、リポ多糖(LPS)のような炎症誘発性刺激の存在下では、TReg細胞はT細胞増殖は抑制しないのに、IL-2とインターフェロンγ(IFNγ)の産生抑制能力は保有していることを明らかにしている。そして、TReg細胞とナイーブCD4+T細胞を一緒に、樹状細胞(DC)とLPSの存在下で培養すると、IL-17を産生するT細胞が誘導される。

TReg細胞をはじめとするさまざまな種類の細胞が産生する免役抑制性サイトカインであるTGFβが、この分化過程の重要な成分であることが突き止められた。中和抗体を使ってTGFβの作用を遮断するとIL-17を産生するT細胞の生成が抑制されるが、TReg細胞が作るサイトカインIL-10を遮断しても抑制は起こらない。TGFβを加えておけば、一緒に培養するのがTReg細胞でなくとも、IL-17を産生するT細胞が誘導される。このことからIL-7を産生するT細胞の分化にTGFβが必須であることがはっきりする。

IL-17を産生するT細胞の生成はDCがないと起こらないので、TGFβの他にDC由来の因子も分化に必要であることがこの研究から明らかになった。著者らはこの不可欠の因子がサイトカインIL-6であることを突き止めた。IL-6の働きを遮断するとIL-17を産生するT細胞の分化は抑えられるが、腫瘍壊死因子(TNF)とIL-1βは分化を促進する。また、IL-23の働きを阻害してやってもこれらの細胞の分化に影響がないので、IL-23はIL-17を産生するT細胞の生存と増殖には重要な役割を持つにもかかわらず、そのde novo生成にはおそらく関わっていないことが示された。

DCとLPSとナイーブCD4+T細胞とを、1型ヘルパーT(TH1)細胞が産生するサイトカインであるIL-12とIL-23、IFNγ、および2型ヘルパーT(TH2)が産生するサイトカインIL-4にそれぞれ特異的な抗体の存在下で共培養すると、IL-17を産生するT細胞の分化が起こる。TGFβ特異的な抗体を加えるとこの分化が阻害されるので、TReg細胞によるTGFβ産生の他に、LPS刺激を受けたDCもTGFβを産生できることが示された。ただし、DCによるTGFβ産生量は、他のT細胞サブセットの分化を促進するサイトカインの働きを遮断せずに、IL-17産生性T細胞の分化を進めるのには十分でない。

したがって、TGFβはIL-6と共に、ナイーブCD4+T細胞からIL-17を産生するT細胞がde novoに分化するのに必須である。TGFβは、TH1とTH2の分化を抑制する役割に加えて、IL-17を産生するT細胞の分化にもっと直接的にかかわっているのだろう。つまり、この研究により、IL-17 を産生するT細胞のde novo生成には、炎症誘発性および炎症抑制性サイトカインの間の独特なバランスが必要であることが明らかになったのである。

doi:10.1038/fake630

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度