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NKT細胞と好中球は協同的に働いて膵島移植拒絶を起こす

Nature Reviews Immunology

2005年11月1日

糖尿病患者の治療法として、インスリンを生産する膵島細胞の移植はかなりの期待がかけられたが、ドナーの膵島に対して速やかな拒絶反応が起きるために、患者の多くが単回の移植ではインスリン離脱に成功しなかった。安波洋一らはこうした拒絶の機構を解明しようと膵島移植のマウスモデルを使って研究を行い、ナチュラルキラーT細胞(NKT)がこの早期拒絶反応にかかわっている可能性を明らかにした。

NKT細胞は即時的に起こる免疫応答に重要な役割をもっており、インターフェロンγ(IFN-γ)を大量に生産できるため、それを介して自然免疫応答と適応免疫応答の間をつなぐ働きをしている。IFN-γは膵島β細胞の破壊に重要な因子であることがわかっているので、著者らはNKT細胞が早期に起こる移植細胞破壊にかかわっているのではないかと考えた。

彼らはまず、C57BL/6マウスにストレプトゾトシンを静脈内注射することで糖尿病を引き起こした。発症は高血糖によって判断される。次に、同系の2匹のマウスから取った膵島細胞を、糖尿病マウスの肝臓内に注入したが、血中グルコース濃度を正常に保つには膵島細胞400個が必要だった。膵島細胞200個を注入されたマウスでは高血糖が続き、無傷の膵島細胞はほとんど見られなかった。しかし、糖尿病マウスがNKT細胞を欠く場合には、100個の膵島細胞の移植で血中グルコース濃度を正常に戻すのに十分であり、NKT細胞が移植膵島細胞の消失にかかわっている可能性が示された。

次に、α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)と複合させたCD1d四量体を使って移植膵島細胞が破壊されたマウスでNKT細胞の数を調べた。NKT細胞数は移植直後に低下するように見えるが(活性化に誘導されるNKT細胞抗原受容体の発現低下と一致している)、その数は移植の24時間後に大幅に増加した。NKT細胞が活性化された結果、好中球が移植膵島に浸潤して高濃度のIFN-γが生産されるようになった。これが膵島の破壊を仲介していると考えられる。

α-GalCerの単回投与はNKT細胞の活性化を引き起こすが、α-GalCerによる刺激が繰り返されるとNKT細胞によるIFN-γの生産が阻害されるという観察結果に基づいて、著者らはα-GalCerをくり返し注射すると移植細胞破壊が防止できるかどうかを調べた。膵島細胞400個の移植を受け、さらにα-GalCerを単回注射された糖尿病マウスでは高血糖が回復せず、好中球とNKT細胞によるIFN-γの生産も増加した。これとは対照的に、α-GalCerをまず3回注射してから200個の膵島細胞の移植を受けた糖尿病マウスでは血中グルコース濃度が正常に戻り、IFN-γ生産も低下した。

以上のように、in vivoでNKT細胞の活性化を調節してNKT細胞と好中球の間のこういう協力関係を阻止する方法は、膵島移植の効率を改善する新規な手段となりそうだ。

doi:10.1038/fake626

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