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あなたは敵なの味方なの?

Nature Reviews Immunology

2002年12月1日

造血作用の際にETSファミリーの転写因子PU.1とGATAファミリーの転写因子GATA1が互いの機能を妨げ合うことは既に明らかにされている。ところで論文誌Immunityに掲載されたWalsh et al.の研究論文では、PU.1がGATA2の発現を抑制することで、その機能を妨げることが明らかにされているが、意外なことにPU.1とGATA2が協調してマスト細胞の運命を決定することもあるというのだ。 PU.1が骨髄性細胞系列とリンパ球系列の産生にとって極めて重要だが、赤血球系列と巨核球系列の産生にとっては重要でないことは、PU.1-/-マウスを使った従来の研究で明らかにされている。今回のWalsh et al.の研究論文では、PU.1がマスト細胞前駆体の生存と分化にとって必要であることが証明されている。PU.1-/-マウスにはマスト細胞がない。またマスト細胞前駆体の数も少なく、それらも発生の初期段階で阻害されている。この研究ではレトロウイルスを使ってPU.1-/-マウスの造血前駆細胞でPU.1を発現させたところ、マスト細胞とマクロファージが発生した。 マスト細胞になるかマクロファージになるかという細胞の運命決定をPU.1 がどのように調節するかを調べるため、Walsh et al.の研究では、活性化しうる形態のPU.1を特定の条件下で発現させるPU.1-/-マウスの前駆細胞系列を作り出した。この時、PU.1が活性化するとマクロファージが発生したが、マスト細胞は発生しなかった。また活性化するPU.1を発現させる細胞ではGata2の発現はなく、PU.1+/-マウスとPU.1-/-マウスの細胞ではGata2が発現した。このことは、Gata2の発現についてPU.1 が負の調節をすることを示している。 さらに実験は続けられ、Gata2が存在しない場合に、PU.1が骨髄前駆細胞からマクロファージへの分化を促進し、マスト細胞への分化を促進しなかったことが判明した。また骨髄前駆細胞でGata2を再び発現させたところ、マスト細胞が発生した。Walsh et al.は、マクロファージへの分化の際にPU.1がGata2の発現と機能を妨げるが、マスト細胞の発生時にはPU.1とGata2が協働するという考え方を提唱している。

doi:10.1038/fake595

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