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概日時計と細胞周期:そのつながりが明かされた

Nature Reviews Molecular Cell Biology

2003年10月1日

内在性の概日時計により制御されている多くの生物過程で見られる日内振動は、24時間周期で起こる。概日時計は照射光の変化を測定し、光周性応答を仲介している。以前の研究から、概日リズムが 細胞周期の調節をしている可能性が示唆されていた。しかし、今回やっと、岡村均(Hiroshi Hitoshi Okamura) らの研究から、この基盤となる仕組みに、細胞周期関連遺伝子であるWee1のClockによる直接的な転写調節が関わっていることが示された。Clockは、概日リズムに関連する遺伝子発現をコントロールする主要なスイッチである。 岡村らは、部分的な肝臓切除(PH)を施したマウスモデルを使い、概日時計と細胞周期の関係を調べた。PHを受けた野生型マウスの肝細胞では、速やかに細胞周期が再開され、数日後には肝臓が増大する。12時間の明暗周期においたマウスで、12時間の明期の開始時点(ZT0)、またはその8時間後(ZT8)にPHを行い、肝臓の再成長の速度を測定した。細胞増殖のマーカーであるブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みについて調べたところ、S期の動態はZT0とZT8で同じだったものの、PHがZT0に行われた場合は有糸分裂期に入る際に遅れが生じることがわかった。このことは、肝切除のタイミングが、細胞再生時の細胞周期の進行に影響を与えることを示している。細胞周期に関わるプロテインキナーゼであるCdc2、およびCdc2の調節因子として知られているWeelWee1を含む他の細胞周期調節因子のメッセンジャーRNA濃度のピークは、BrdU取り込みのピークと類似していた。つまり、このことは、細胞周期の調節因子がこの過程に関わっていることを示している。 既知の時計調節因子に変異が起こっているマウス、例えば、青色光を感知する光受容体であるクリプトクローム(cry)に変異が生じたマウス(cry)に肝切除を施すと、正常な肝臓再生が妨げられ、Cdc2活性のピークが現れなくなる。Wee1の濃度は、cry変異体マウスでも上昇するが、clock変異体マウスでは低下した。Clockタンパク質は、E-boxモチーフ類に結合することで遺伝子発現を調節しており、E-boxモチーフの内の3つがWee1の5'UTR中で見つかっている。これらの領域に変異が起こると、Wee1のClock/Bmal1による転写が低下するが、これはおそらくClockがWee1の上流に結合して転写を調節できなくなるためだろう。これは、概日時計と細胞周期の調節の間に、直接的だが一方向にだけ働く調節機構(著者らはフィードバックのないことを明らかにしている)が存在することを示している。 概日時計の機能の基盤となる分子機構はまだほとんどわかっていないが、細胞周期調節因子と時計成分のあいだのつながりについて遺伝学的解析が進めば、この調節機構のコントロールについて重要なてがかりが得られると考えられる。

doi:10.1038/fake561

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