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老いた脳の若いニューロン

Nature Reviews Neuroscience

2003年5月1日

成体になってから生じたニューロンは、若年期のものとは大違いの環境で発生する。成体で生まれたニューロンは、機能している脳回路を通り抜けてその道筋を見つけるからである。Nature Neuroscience 5月号の論文によると、おそらくこの理由で、成体で生まれたニューロンの機能的性質は若年性動物で見られるのとは異なる順序で発現する。

新生した成体生成ニューロンは成熟神経組織の間を、初めは嗅球の接線方向に移動する。次に放射状に移動して最終的な位置へ向かう。Pierre-Marie Lledoらは巧妙な手法を用いて、生体脳組織におけるこれら新生細胞を同定した。嗅球の接線方向に移動しているニューロンでは抑制性A型GABA受容体と興奮性AMPA受容体が発現していることがパッチクランプ記録法により示された。可塑性関連NMDA受容体はそれよりあと、放射状に移動するニューロンで現れる。若年性組織ではNMDA受容体はAMPA受容体に先んずるのと対照的である。自発的シナプス活性は移動が完了した直後に現れた。しかし、スパイク活性はニューロンが完全に発達するまで生じなかった。この興奮性成熟の遅れは、成体ですでに位置決めされている回路構成要素の機能を新生ニューロンが混乱させるのを防ぐ役割があるのかもしれない。

doi:10.1038/fake515

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