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ノイズの由来はどこか

Nature Reviews Genetics

2006年2月1日

 生物学ではノイズが厄介者でなくなった。それは、ノイズが分子の抱えるさまざまな相互作用の必然的な副産物というだけではなく、現実に発達や進化、疾患に不可欠なものであることが認識されて以来のことである。ノイズを検出してその影響を測定する方法は知られているが、ノイズはどこで生ずるのであろうか。コンピュータモデルを用いた新たな研究により、看過されてきたこの問題の正確な解が得られた。

 ノイズ、すなわち遺伝子発現の多様性には二種類ある。「内因性」ノイズは分子の相互作用が本来的にもっている多様性がもたらすものであり、「外因性」ノイズは環境の無作為な揺らぎ、または複数遺伝子に共通の制御的入力の効果によるものである。著者らが解明しようとしたのは外因性ノイズである。

 研究では5系統の酵母(Saccharomyces cerevisiae)が作製された。各系統は、同一のガラクトース誘導性外来遺伝子がそれぞれ異なる数だけ染色体上の同一部位に導入されたものである。この遺伝子の発現がGFP蛍光によって単一細胞のレベルで測定され、ノイズの強弱と導入遺伝子のコピー数との解析によって多様性の起源が評価される。外因性ノイズがなければ、細胞集団中の蛍光の変動係数(分散と平均平方との比と定義する)は導入遺伝子のコピー数および誘導因子の量に反比例するはずである。

 測定では変動係数が導入遺伝子のコピー数と無関係であったことから、この系が外因性の多様性に支配されていることが明らかにされた。遺伝子発現を集団の増殖と関連づける数学モデルにより、重要な情報がふたつ得られた。誘導因子が大量に存在する場合、導入遺伝子の発現量の多様性は集団の挙動(細胞増殖の様式、細胞分裂の時期、遺伝子発現の速度など)のみに左右される。これは実験の測定値を支持し、細胞集団にみられる低レベルの多様性(「ノイズフロア」)の存在と両立するものである。しかし、誘導因子の濃度が低い場合、外因性ノイズは役割を増し、この系ではGAL1プロモーター上流の共通の活性化因子であるGal4にまでさかのぼることとなった。

 この系の細部はガラクトース誘導性の遺伝子ネットワークに特有のものであるが、この研究が用いたモデルの仮定は一般化に耐えるものであり、同じ原理がほかの真核生物系にも当てはまるかどうかの検討に道が開かれている。

doi:10.1038/fake501

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