【生物工学】蒸発による発電と移動運動
Nature Communications
2015年6月17日
移動運動、発電などの一般的な課題を達成するためのエネルギーを供給する蒸発駆動エンジンの最初の実例について報告する論文が、今週掲載される。このエンジンはミニチュアカーを駆動し、LEDの電源となることが実証され、これまで利用されていなかった環境中の水によって有益なレベルの動力を供給できることが明確に示された。
蒸発は、いたるところで見られる現象で、地球の気候におけるエネルギー変換の主たる形態である。蒸発だけをエネルギー源とする人工系は数少ないが、そうした適応の事例は自然界に数多く見られる。今回、Ozgur Sahinたちは、8 µm厚のポリイミドテープに細菌の胞子を付着させてHYDRA(吸湿による人工筋肉)を作り出した。この細菌胞子の中では、水がナノスケールの空洞に閉じ込められており、湿度に応じて大きな圧力の変化が誘発されるようになっている。そのため、ポリイミドテープの曲率は、湿度の増減に応じて変化し、複数のポリイミドテープを並列に積み重ねると、重力に逆らって重いものを持ちあげることもできるようになる。
次にSahinたちは、HYDRAを用いて、空気と水の界面に置くと自律的に始動し作動する蒸発駆動のロータリーエンジンとピストン様の動きをするエンジンを作製した。さらにSahinたちは、水面上に設置され、水の蒸発によって発電し、LEDの電源となる発電機を設計し、さらには、車内の水分が蒸発すると前進するミニチュアカー(重さ100グラム)を設計した。この蒸発駆動のエンジンは、自然環境で機能するロボットシステムやセンサー、デバイス、装置の動力源としての応用が考えられる。
doi:10.1038/ncomms8346
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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