Research Press Release
【進化】先カンブリア時代の生物の進化は湖沼で起こっていた
Nature Communications
2015年5月20日
先カンブリア時代には深海で多くの生物の多様化と進化が一時的に停止した可能性があるが、その多様化と進化が湖沼で続いていた可能性が非常に高いという報告が、今週掲載される。これまでの研究では、先カンブリア時代の海洋でモリブデン(真核生物と窒素固定細菌が必要とする微量金属)が不足し、多くの生物の進化と多様化が遅れたことが示唆されている。
今回、John Parnellたちは、英国スコットランド北西部のトリドニアン系堆積岩から得た新データを提示し、先カンブリア時代の湖沼堆積物に高濃度のモリブデンが含まれていることを明らかにした。この湖沼堆積物には、毎年の層形成も記録されているため、湖へのモリブデンの平均年間流入量を計測でき、海洋環境への流入量より1~2桁多いことが明らかになった。このように高濃度のモリブデンが湖中に常に存在していたことと先カンブリア時代のスコットランドの湖で生物がモリブデンのような金属を利用できたという学説を前提とすると、この湖は窒素固定細菌の繁殖と真核生物の多様化に適した環境だったといえる。
doi:10.1038/ncomms7996
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
健康:長期的なコロナウイルス感染症の後遺症は月経障害と関連するNature Communications
-
気候変動:温暖化が熱帯地域の土壌からの二酸化炭素排出を増加させるNature Communications
-
物理学:塩分を含んだ氷を用いた発電Nature Materials
-
環境:アマゾン先住民の領域が人間の健康に恩恵をもたらすCommunications Earth & Environment
-
動物学:タコはあらゆる作業に最適な腕を前面に出すScientific Reports
-
気候変動:主要な炭素排出源が熱波の強度と発生確率に影響を及ぼしているNature