Research Press Release
睡眠中に人為的な記憶を形成
Nature Neuroscience
2015年3月10日
睡眠中に人為的な記憶を生み出すことができるという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この研究は、マウスで睡眠中に特定の場所と報酬との関連付けを形成させることができ、この関連付けが覚醒後にマウスを行動に駆り立てることを示している。
脳の海馬という領域に見つかる場所細胞は、動物がその活動範囲内の特定の場所にいるとき活性をもつ。覚醒しているときこれら細胞に生成する活性化のパターンは睡眠中にも再生され、動物の行動範囲に関する認知地図を強化するのに役立つと考えられている。
Karim Benchenaneたち研究者は、睡眠中のマウス5匹で特定の場所を符号化している場所細胞が活性を持つ間に脳の報酬経路を刺激した。別の2匹は報酬に関係のない刺激を受け取った。マウスが目覚めたとき、報酬刺激を特定の場所細胞の活性化と組み合わせて受け取ったマウスのみが、その場所細胞で符号化された特定の場所で過ごす時間が多くなった。このことは睡眠中のマウス脳に人為的な記憶が形成されたことを示唆している。
これまでの研究で、マウスで記憶を人為的に操作できることが示されていたが、この研究は睡眠中の動物でこうした操作を示す初めてのものである。このような記憶操作がヒトで起こり得るのかは、現在のところ知られていない。
doi:10.1038/nn.3970
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
生体医工学:皮膚を透過するポリマーが動物にインスリンを送達Nature
-
神経科学:言語の知覚は翻訳によって失われないNature
-
神経科学:ダンスに対する脳の反応を解明するNature Communications
-
神経科学:減量薬が食物渇望に関連する脳信号に影響を与えるかもしれないNature Medicine
-
医学:豚からヒトへの腎臓移植の長期経過観察Nature
-
生態学:鳥インフルエンザがサウスジョージア島の繁殖期のゾウアザラシ個体数を半減させるCommunications Biology
