ピーナッツアレルギーの発生リスクに関連する遺伝的変異
Nature Communications
2015年2月25日
一般的な食物アレルギーに対する感受性について解明することを目的とした大規模な公的研究が行われ、ピーナッツアレルギーに関連する遺伝的変異が新たに同定された。今回の研究は、すでに特徴が明らかになっているアレルギーを調べるための初めての大規模な全ゲノム関連解析であり、ピーナッツアレルギーが他の食物アレルギーとは遺伝的に異なっている可能性があることを示唆している。この研究成果の報告が、今週掲載される。
米国の子どもの2~10%は食物アレルギーを有しており、食物アレルギー関連アナフィラキシーにおいてピーナッツアレルギーの占める割合は不釣り合いに大きい。また、食物アレルギーは、重症のアレルギーを持つ者の生活の質に悪影響を及ぼすことがある。食物アレルギーについては、その基盤となる生物学的機構の解明が進んでいないために、予防と治療に制約が加わっている。
今回、Xiaobin Wangたちは、食物アレルギーと関連する遺伝子多様体を同定するため、シカゴ食物アレルギー研究の対象となった子どもとその親(合計約3000人)の遺伝子型判定を行った。その結果、卵アレルギーと牛乳アレルギーに関連する遺伝子多様体は見つからなかったが、ピーナッツアレルギーは、DNAの特定の変異とHLA-DR、DQ両遺伝子領域のエピジェネティック変化のレベルと強く関連していることが分かった。これらの遺伝子の産物は、アレルギーの発生に極めて重要な役割を果たすことが知られている。
この新知見は、ピーナッツアレルギーのリスクを支える生物学的基盤の解明を進めるための今後の研究に新たな道を開くものであり、アレルギーの検出法と治療法の新たな開発に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms7304
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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