Research Press Release
【医学研究】凍結保存した精巣組織を使って生きた仔マウスを作り出す
Nature Communications
2014年7月2日
凍結保存した精巣組織を用いる方法で、生きたマウスの仔が初めて作り出されたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究成果は、精巣組織の凍結保存が、生殖能力を保持するための現実的な方法となる可能性を示している。
不妊は、特定のがん治療法の副作用の1つだ。小児がんの治癒率が上昇しているため、患者の生殖能力は、本人とその家族にとっての重要な関心事となっている。精液の凍結保存は、思春期後の患者だけに適用できるため、それより若い患者に使える別の方法が必要となっている。
小川毅彦(おがわ・たけひこ)のグループは、これまでに、マウスにおいて完全な精子形成(精巣から精子が作られる過程)を誘導する器官培養システムを開発していた。今回の研究では、緩慢冷却法、ガラス化法(特殊な急速凍結法)のいずれかによって新生仔マウスの精巣組織を凍結保存し、その後解凍した組織を培養したところ、凍結保存しなかった対照組織と同じ効率で精子形成が生じることが明らかになった。
この研究では、4か月以上凍結保存された組織を用いて精子微小注入(未成熟な卵細胞への精子の直接注入)が行われ、合計8匹のマウスの仔が生まれた。これらの仔は、健康に成長し、生殖能力を有していた。今回発表された方法は、生殖能力を保持する方法となる可能性があるが、ヒトに応用できるまでには、さらなる研究を必要とする。
doi:10.1038/ncomms5320
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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