Research Press Release
【がん】肺腫瘍を支える細胞が治療標的となる可能性
Nature Communications
2014年3月26日
肺がん幹細胞と繊維芽細胞(非がん細胞)との間のシグナル伝達リンクについて記述された論文が、今週掲載される。今回の研究結果は、繊維芽細胞を標的として肺がんを治療する新薬の開発に役立つ可能性がある。
肺がんの場合、がん幹細胞が従来の治療法に抵抗性を示すことが多い。がん幹細胞が腫瘍中で生き続ける過程を解明することは、がん幹細胞を死滅させる新たな方法を開発するために重要だ。今回、Pan-Chyr Yang、Huei-Wen Chenたちは、実験室で、肺がん幹細胞と繊維芽細胞を共培養した。繊維芽細胞は、腫瘍に随伴した状態で見つかることが多い。この実験では、繊維芽細胞が、シグナル伝達機構を介して、腫瘍細胞の幹細胞的特徴を支援していることが明らかになった。そして、実験室内で、このシグナル伝達経路を遮断したところ、腫瘍細胞のがん幹細胞的特徴が減った。次にヒト肺がん細胞の検体を調べたところ、このシグナル伝達経路の特徴を示す繊維芽細胞と腫瘍の生存率が低いことが判明した。今回の研究で得られた知見は、このシグナル伝達経路と繊維芽細胞を標的とすることが肺がんの治療に役立つ可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms4472
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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