Research Press Release
ナノ粒子を利用した有効なワクチン
Nature Nanotechnology
2013年12月2日
毒素の構造を維持するワクチン接種法によってワクチン接種の有効性が向上したことが、今週のオンライン版に報告されている。
不活化毒素を用いたワクチンは、本格的に病気を起こさずに、細菌感染(大腸菌感染など)に対する免疫を誘導するために使用されている。通常、毒素は化学的または熱的に不活化される。しかし、こうした不活化処理によって毒素の構造が変化するため、ワクチン接種の有効性が低下する恐れがある。
Liangfang Zhangたちは、赤血球膜で覆われたナノ粒子を用いて毒素を捕捉することによって、ブドウ球菌α溶血素の毒素構造を維持する方法を開発した。この毒素捕捉法で、免疫応答誘導効率を維持しつつ、毒素の毒性を中和することができる。
Zhangたちは、今回開発したナノ粒子ベースのワクチンと熱的に不活化した毒素を含む対照ワクチンのいずれかをマウスの皮膚に注射することによって、これらのワクチンの安全性と有効性を比較した。その結果、ナノ粒子ベースのワクチンの方が、対照ワクチンよりも高い濃度の抗体を誘導し、毒素にさらされたとき毒素中和能力の高い抗体が生成することを見いだした。こうした有効性向上の結果、対照ワクチンを接種したマウスの生存率が90%であるのに対し、ナノ粒子ベースのワクチンを接種したマウスの生存率は100%に向上した。
doi:10.1038/nnano.2013.254
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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