Research Press Release

ナノチューブと抗体を用いた腫瘍標的化

Nature Nanotechnology

2013年9月30日

DNAに似た相補的な合成分子を結合させたカーボンナノチューブと抗体を利用することによって、腫瘍に抗がん剤を送達できるという報告が、今週オンライン版に掲載される。この方法で、マウスのがん治療に伴う一部の毒性問題の克服に成功している。

カーボンナノチューブは、大量の治療薬を運ぶことができるうえ、小分子のように腎臓ろ過によって迅速に循環系から排出されるので、ドラッグデリバリーに適している。

今回、David Scheinbergらは、単層カーボンナノチューブを用いて、2段階で腫瘍を標的化できることを示している。まず、モルフォリノオリゴヌクレオチドという短鎖状のDNA類似体で修飾した抗体を用いて、がん細胞を事前に標的化する。次に、抗体上のDNA類似体に相補的な短鎖分子で修飾したナノチューブを投与し、がん細胞上の抗体に結合させる。これによって、治療薬や造影剤が標的腫瘍に送達される。研究者らは、生体外および担がんマウスにおいてナノチューブが選択的にがん細胞と結合することを示している。さらに、放射性同位体225Acで標識したナノチューブを用いてマウスモデルのリンパ腫を治療できること、またナノチューブが迅速に除去されるため放射性同位体毒性が軽減することを見いだしている。

doi:10.1038/nnano.2013.190

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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