持続可能な魚油脂肪酸の生産
Nature Biotechnology
2013年7月22日
遺伝子操作した酵母によって、魚油の最も重要な成分の1つであるエイコサペンタエン酸(EPA)が大量に、持続的に供給できるとの報告が寄せられている。この魚油からは栄養補助食品や魚類飼料への添加物がつくられ、米国で市販されている養殖サケの持続的な生産に役立っている。
魚油は昔からヒトの健康に有益であると考えられているが、すでに海洋魚種資源は逼迫した状態にあるため、なお増大し続ける魚油の需要を満たすためには、持続可能な供給源が求められている。魚油の健康効果は、ある種の脂肪酸、特にオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸を豊富に含んでいることが大きな理由である。これらの分子は魚が生産する訳ではなく、魚が食べた海洋微生物によって生産される。盛んに試みられてはいるものの、これを生産する微生物を工業規模で培養するのは難しいことがわかっている。
酵母 Yarrowia lipolytica は大量培養がしやすく、天然にかなりの量の油を生産するが、Quinn Zhuたちは、この酵母を遺伝子操作してEPAを生産させようとした。この酵母に非常に効率の高いEPA生産経路を組み込むためには、21個もの外来遺伝子の導入と、酵母本来の遺伝子1個のノックアウトが必要だった。その結果、この新しい酵母株では、細胞の乾燥重量の最大30%、脂質の半分以上がEPAになったという。Yarrowia lipolyticaはすでにヒトの栄養補助食品の商業生産に利用され、養殖サケにEPAを供給する飼料の原料としても利用されている。
doi:10.1038/nbt.2622
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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