カンチレバーで細菌検出
Nature Nanotechnology
2013年7月1日
カンチレバー(片持ち梁)型高感度センサーの変動を利用することにより、低濃度の細菌を検出できるうえ、抗生物質に対する反応を数分以内に記録できるという報告が、今週オンライン版で掲載される。この研究結果は、患者に投与する前に特定の細菌に対する薬剤の有効性を評価するのに役立つかもしれない。
薬剤の広範な誤用が多剤耐性細菌を増加させたと考えられている。したがって、抗生物質に対する細菌の反応を迅速に検出・評価する手段が、感染管理に必要である。従来の検出・評価法は、通常、最低でも24時間必要であり、使用コストが高く、細菌の生死を判別できないことが多い。
Giovanni Longoらは、高感度の原子間力顕微鏡カンチレバーを利用することによって、低濃度の細菌を検出し、その代謝を評価し、抗生物質に対する反応を定量的にスクリーニングしている。Longoらはまず、アンピシリンという抗生物質に対する感受性が高い特定の大腸菌株を用いた。実験では、さまざまな濃度のアンピシリンを導入している。Longoらは、アンピシリン導入前はカンチレバーの変動が大きい、つまり細菌活性が高いのに対し、アンピシリン導入後、変動レベルが下がる、つまり細菌活性と生存率が低下することを示している。
次に、黄色ブドウ球菌を用いてこの方法をテストし、全ケースについてアンピシリン導入によりカンチレバーの変動が小さくなることを示した。このことから、アンピシリンによって黄色ブドウ球菌も不活化することがわかる。
Longoらの示唆によると、このセンサーは、細胞やタンパク質構造変化を調べる新しい実験や、過酷な環境における生命体の発見にも応用できるかもしれない。
doi:10.1038/nnano.2013.120
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
考古学:古代のゲノムからアバール人コミュニティーの社会組織と権力の再編が明らかになったNature
-
天体物理学:マグネターの巨大フレアという珍しい現象が観測されたNature
-
創薬:脳オルガノイドを使って神経発達障害の治療法を検証するNature
-
医学:実験室で培養された「ミニ結腸」をがん研究に用いるNature
-
遺伝学:鳥の歌のリズムを調べるNature Communications
-
心理学:画像の特徴は時間の経過の感じ方に影響を及ぼす可能性があるNature Human Behaviour