【天文学】市民科学者による夜空の明るさの追跡観測
Scientific Reports
2013年5月16日
市民科学者による夜空の明るさの追跡観測について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、夜空の明るさ(大気中の人工光の散乱を原因とする光害の一形態)の変化を調べる研究で、ゆくゆくは、肉眼観測の結果をまとめたデータが利用できるようになることを示唆されている。
夜空の明るさは、生態に対する実際の影響と影響可能性のために、世界的な環境問題の1つとなっている。"GLOBE at Night"は、光害に関連した市民科学プロジェクトで、2006年以来行われてきた。このプロジェクトでは、市民科学者に対して、日没の少なくとも1時間後に外出して、実際に見える星座と星図に示された星座を比較することを依頼した。この比較では、星の明るさの点だけが異なっていた。
今回、Christopher Kybaたちは、"GLOBE at Night"での観測者個人の肉眼による天空輝度の見積りに伴う体系的不確実性を評価した。その結果、"GLOBE at Night"参加者の肉眼観測の結果をまとめたデータと同じ地域での人工的な夜空の明るさのレベルが強く相関していることが判明した。さらに、Kybaたちは、"GLOBE at Night"データの一部を用いて、First World Atlas of Artificial Night Sky Brightnessによる夜空の明るさの見積りを検証した。その結果、Atlasの場合、大都市の中心部分での夜空の明るさが過大評価される傾向があったが、天の川銀河に関する予測は正しいことがわかった。
単一の観測地点での肉眼データには不確実性を伴うため、単一の地点での傾向を観察するには、数十年かかる可能性があるが、今後、"GLOBE at Night"のデータセット全体が、夜空の明るさを調べるための手段としてますます有用なものとなる可能性があるという見方をKybaたちは示している。
doi:10.1038/srep01835
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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