生態学:海面上昇が外来海洋生物の拡散を助長する
Nature Ecology & Evolution
2026年9月29日
今世紀半ばと今世紀末の予測では、世界中で新たに浸水する沿岸域の3分の2以上が、122種の外来海洋生物に適した生息地となる可能性がある。この122種には、チュウゴクモクズガニ(Chinese mitten crabs)、マガキ(Pacific oysters)、およびウシエビ(Asian tiger shrimp)などが含まれる。Nature Ecology & Evolution に掲載されるこの研究では、米国東部、メキシコ湾、北海沿岸、中国南東部、およびオーストラリア北部などを、リスクが高まっている地域として特定している。
生物侵入は、生物多様性の喪失や生態系の変化のおもな原因の一つである。これまでの研究では、気候変動が種の分布をどのように変化させ得るかが検討されてきた。一方、海面上昇によって新たに浸水する沿岸域へ外来海洋生物が拡散する可能性は、地球規模では評価されていなかった。河口域は、陸と海をつなぐとともに、人間活動の中心地でもあるため、特に脆弱である可能性がある。
Qiang Lin(中国科学院〔中国〕)、Xuan Liu(北京師範大学〔中国〕)らは、すでに定着している外来海洋動物122種の将来の分布をモデル化した。この122種には、ブルークラブ(Atlantic blue crabs)、ヨーロッパミドリガニ(European green crabs)、およびマヒトデ(Northern Pacific sea stars)などが含まれる。解析には、海面上昇が続くと予測する将来の気候変動シナリオを用いた。中程度の排出シナリオであるSSP2–4.5(SSP:Shared Socioeconomic Pathway〔共通社会経済経路〕)では、全球平均海面水位の上昇量の中央値は、2050年までに20センチメートル、2100年までに56センチメートルと予測されている。
著者らの予測では、新たに浸水する沿岸域のうち29万~47万平方キロメートルが、これらの種に適した生息地となり得る。これは、推定範囲の下限でイタリア、上限でスウェーデンの面積にほぼ相当する。適した生息地は、特に中緯度の河口域に多いと予測された。すべてのシナリオで、対象とした122種は平均すると、それぞれがすでに定着している海洋生態域に隣接する浸水沿岸域の3分の2以上に定着するという結果になった。また、外来海洋生物は、河口域に近い地域ほど広範囲に拡散する傾向が示された。こうした地域では、新たに浸水した土地が適した生息地になると考えられる。
今回の研究結果は、これまで見過ごされてきた生物侵入の経路を示すとともに、侵入リスク評価に海面上昇を組み込む必要性を浮き彫りにしている。著者らによると、早期のモニタリングと管理策によって、沿岸域の生物多様性、漁業生産性、そのほかの生態系サービスへの影響を抑えられる可能性がある。一方、著者らは、依然として不確実性があり、新たに浸水した生息地では、必ずしも速やかに定着が進むとは限らないと注意を促している。
- Article
- Published: 28 September 2026
Zhang, Z., Yan, Z., García Molinos, J. et al. Global sea-level rise will create a new biological invasion front. Nat Ecol Evol (2026). https://doi.org/10.1038/s41559-026-03181-4
doi:10.1038/s41559-026-03181-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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