Research Press Release

考古学:鉄器時代初期の遺跡で標的を定めた集団暴力が明らかに

Nature Human Behaviour

2026年2月24日

セルビアのゴモラヴァ(Gomolava)で発見された紀元前9世紀の集団墓地は、女性と子供を標的とした致死的な暴力の証拠を示していることを報告する論文が、Nature Human Behaviour にオープンアクセスで掲載される。この発見は、同地域における権力、暴力、およびジェンダー関係の変化を示唆しており、先史時代後期のヨーロッパにおける集団的暴力が、どのように社会関係や地域の権力構造を再編し得たのかを理解する新たな手がかりを提供している。

集団墓地は、過去の暴力の組織化と動機を検証するうえで重要な資料である。ゴモラヴァは、現在のセルビア北部に位置する鉄器時代初期の遺跡で、異なる文化や伝統が交わる南パンノニア平原(Pannonian Plain)にある。鉄器時代初期、この地域のコミュニティーは変化と再編成の過程にあり、同遺跡は紛争とその広範な社会的背景を考察する貴重な情報源となる。

Linda Fibigerら(エディンバラ大学〔英国〕)は、ゴモラヴァの単一の埋葬事例から出土した77人の遺骸を分析した。そのうち51人(66%)は子供と若者であった。生物学的性別が判別可能な72人のうち、51人(71%)が女性であった。骨格分析では、暴力によるものと一致する治癒していない損傷が確認された。その最も多くは、頭部に集中し、一部の人体からは投射武器による傷や防御時の負傷の痕跡も認められた。個体の一部を対象にした遺伝子解析では、大多数が互いに近縁関係にないことが示された。同位体分析からは、幼少期の出身地や食習慣の多様性が示唆され、これらの人々が単一の集落や関連する家族集団ではなく、より広い地域の人口から集められた可能性が示唆された。

これらの発見は、おもに女性と子供を標的とした大規模な選択的殺害が意図的に行われたことを示唆しており、地域全体の関連コミュニティーに長期的な影響を与えた可能性がある。著者らは、遺体の保存状態が不完全であったことや、遺伝子解析が一部の個体群に依存せざるを得なかったことなど、研究の限界を指摘している。先史時代後期のヨーロッパにおける移動、コミュニティー間の結びつき、および暴力がどのように交差していたのかをより深く理解するためには、ほかの遺跡との比較研究が今後必要となる。

Fibiger, L., Iraeta-Orbegozo, M., Koledin, J. et al. A large mass grave from the Early Iron Age indicates selective violence towards women and children in the Carpathian Basin. Nat Hum Behav (2026). https://doi.org/10.1038/s41562-025-02399-9
 

doi:10.1038/s41562-025-02399-9

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度