社会科学:研究テーマの変更は被引用数の減少につながるかもしれない
Nature
2025年5月29日
科学者が過去の研究テーマから離れるほど、新たな研究の被引用数が減少する――数百万件の科学論文と特許の分析結果を報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。
科学の分野は常に変化しており、研究者は気候変動から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックまで、新たな課題に対応する必要に迫られている。適応力が求められ、研究者は研究の方向性を再考する必要があり、新たな研究分野への参入や移行を検討する必要があるかもしれない。このような方向転換は、新たな視点をもたらす可能性を秘めているが、異なるテーマや分野への適応に伴う課題も伴う。しかし、このような変化の程度とその影響に関する理解は依然として限定的である。
Dashun Wangと Benjamin Jonesら(ノースウェスタン大学〔米国〕)らは、研究者が既存の研究分野からどの程度離れるかを定量化する新たなフレームワークを設計した。主要な分析では、1970年から2015年に発表された2,580万件の科学論文の著者および1985年から2015年に米国で付与された170万件の特許を対象に、研究方向転換の程度と影響を評価した。その結果、「転換ペナルティ(’pivot penalty’)」が特定され、研究者が以前の分野から離れるほど、新規研究の影響力が低下することが示された。小さなキャリア転換と比べ、大きな転換は、論文の掲載が難しくなり、被引用数の減少、および「ヒット論文(‘hit’ paper)」(被引用数上位5%の論文)となる可能性の低下と関連していた。特許についても同様の傾向が観察された。
著者らは、COVID-19パンデミック期間中の研究にも注目している。この期間、多くの研究者がパンデミック対応をテーマに研究を転換した。著者らは、2つの対照的な結果を指摘している。COVID-19関連研究の影響は、情報需要の増加により一般的に高かったものの、研究者が元の分野から離れるほど、その影響は著しく低下すると推定されている。
これらの結果は、新たな研究分野への適応の難しさを明らかにしている。このような方向転換の影響を研究することは、適応成功を向上させるためのアプローチを策定する上で役立つかもしれない、と著者らは結論付けている。
- Article
- Open access
- Published: 28 May 2025
Hill, R., Yin, Y., Stein, C. et al. The pivot penalty in research. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09048-1
doi:10.1038/s41586-025-09048-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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