考古学:遠い昔に存在していたナイル川のアフラマト支流沿いに建設されたエジプトのピラミッド群
Communications Earth & Environment
2024年5月17日
エジプトにある31個のピラミッド(ギザのピラミッド群を含む)はもともと、長らく農地や砂漠の下に埋もれていたナイル川の1つの支流(全長64キロメートル)に沿って建設されたものと考えられることを報告する論文が、Communications Earth & Environmentに掲載される。これらのピラミッドは、現在は居住に適さない細長い砂漠地帯に集中しており、その理由が、今回の知見によって説明できるかもしれない。
エジプトのギザとリヒトの間にあるピラミッド群は、約4700年前から約1000年の歳月をかけて建設されたもので、現在は居住に適さないウエスタン砂漠(サハラ砂漠の一部)の端に位置している。かつてのナイル川は、流量が今よりはるかに多く、ところどころでいくつかの支流に分かれていたことが、堆積物の証拠から示唆されている。研究者たちはこれまで、これらの支流の1つがこのピラミッド群の近くを流れていたのではないかと推測していたが、それが正しいという確認はなされていない。
今回、Eman Ghoneimらは、衛星画像を用いて、このピラミッド群のすぐ近くにあるウエスタン砂漠台地の丘陵に沿って流れていたと考えられるナイル川のかつての支流の位置を推定した。次にGhoneimらは、地球物理学的調査と堆積物コアの解析結果を用いて、現在の地表の下に河川堆積物と水路の痕跡が存在していることを確認し、かつて支流が存在していたことを明らかにした。Ghoneimらは、アフラマト(アラビア語で「ピラミッド」を意味する)という名称を提案している。Ghoneimらは、約4200年前に始まった大干ばつに関連して、風成砂(風によって運搬・堆積された砂)の蓄積が増加したことが原因の1つとなって、この支流が東に移動し、最終的には土砂が堆積してしまった可能性があると示唆している。
今回の発見は、このピラミッド群が、古代エジプトの首都メンフィス近くの細長い砂漠地帯に集中している理由を説明できる可能性がある。これらのピラミッドが建設された当時は、この支流を通って、ピラミッドと容易に行き来できたと考えられるからだ。さらに、Ghoneimらは、これらのピラミッドの多くに土手道があり、Ghoneimらが川岸と推定する地点までつながっていることを明らかにした。Ghoneimらは、これは、アフラマト支流が建設資材の輸送に使用されていたことを示す証拠だと指摘している。
Ghoneimらは、今回の知見は、ナイル川が、古代エジプト人にとって主要路と文化の動脈として重要であったことを改めて示すものであり、人類社会がこれまでに環境の変化によってどのような影響を受けてきたかを浮き彫りにしていると述べている。Ghoneimらはまた、ナイル川のかつての支流をさらに発見するための研究を進めることは、ナイル川の川岸に沿った考古学的発掘調査を優先的に実施し、エジプトの文化遺産を保護するために役立つ可能性があると付言している。
doi:10.1038/s43247-024-01379-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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