古生物学:古代の小型クジラの新種が発見された
Communications Biology
2023年8月11日
バシロサウルス科のクジラ(全水生のクジラの絶滅種)の新種の遺骸化石について記述された論文が、Communications Biologyに掲載される。この新種のクジラは、体長2.5メートルと推定され、これまでに発表されたバシロサウルス科のクジラの中で最も小型の種と考えられている。この新種は、古代エジプトのファラオであるツタンカーメンにちなんでTutcetus rayanensisと命名された。
Mohamed AnterとHesham Sallamらは、エジプトのファイユーム凹地で、新種のクジラの頭蓋骨、顎、歯、椎骨の断片化石を発見し、年代測定によって約4100万年前のものであることを明らかにした。頭蓋骨と椎骨が融合し、永久歯が萠出完了期に達していたため、このクジラは、成体に近かったが、完全な成体ではなかったことが示唆された。また、このクジラの永久臼歯は、前小臼歯、切歯、犬歯より先に萠出していた。永久小臼歯より先に永久臼歯が萠出する現象が生活環の短い哺乳類で起こる傾向があるという学説が先行研究で提唱されていることを考えると、T. rayanensisは、他のバシロサウルス科のクジラよりも低年齢で性的に成熟し、寿命も短かったのかもしれない。また、遺骸化石の大きさをもとに、体長が約2.5メートル、体重が約187キログラムと推定された。過去の研究で同定されたバシロサウルス科のクジラの体長は4~18メートルであったことからT. rayanensisが、これまでで最も小型のバシロサウルス科のクジラということになる。
著者らは、T. rayanensisの体サイズが他のバシロサウルス科のクジラより小さいのは、ルテシアン期の温暖化極大期(約4200万年前)と呼ばれる温暖化現象に対応したものだった可能性があると推測している。過去の研究で、気候が温暖化すると、動物の体サイズが小さくなるという傾向が示唆されているからだ。以上の知見は、バシロサウルス科のクジラの進化を解明するための新たな手掛かりとなる。
doi:10.1038/s42003-023-04986-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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