免疫学:エプスタイン・バーウイルスに対するワクチンの新規候補
Nature Communications
2023年8月9日
多発性硬化症や特定のタイプのがんに関連する病原体であるエプスタイン・バーウイルス(EBV)に対する新しいワクチン候補をマウスに投与する研究が行われ、有望な結果が得られたことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。EBVはほとんどの人が感染しているが、現在のところ、EBVが関連する疾患の発症を予防するワクチンは承認されておらず、ワクチン開発が世界で喫緊の課題となっている。
EBVは、唾液を介して伝播するヘルペスウイルス科のウイルスであり、世界の成人人口の少なくとも95%が感染していることが知られている。EBVは、初感染時に腺熱を引き起こすことがあるが、他のウイルスとは異なり、初感染後に免疫系によって除去されることはなく、感染者は、生涯にわたってEBVを保有する。EBVの感染は、多発性硬化症、ホジキンリンパ腫、一部の咽喉がんや鼻がんの発症リスク因子でもある。それにもかかわらず、これまでのEBVワクチン候補は、ヒトや動物モデルでの試験結果が思わしくなく、現時点で、有効性が実証されたワクチンや承認されたワクチンはない。
今回、Rajiv Khannaらは、リンパ節を標的とするワクチンを設計し、マウスモデルを使って有効性を検証した。その結果、ワクチンを投与すると、強力でEBV特異的な抗体とT細胞が産生され、マウスモデルにおいてワクチン接種後少なくとも7カ月間保持されることが明らかになった。重要な点として、このワクチンはリンパ腫のマウスモデルにおいて、免疫を誘導して、EBV関連腫瘍の拡散を抑制し、腫瘍の増殖を抑制することが実証された。
このワクチンが、EBVの初感染時にどの程度効果を発揮するか、また、今回の結果をどの程度ヒトに応用でき、ワクチンが誘導する免疫の安定性の長期化にどの程度つながるかを明らかにするためには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41467-023-39770-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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