環境:マイクロプラスチックの摂取が海鳥の腸内マイクロバイオームを変化させている可能性
Nature Ecology & Evolution
2023年3月28日
環境中の高レベルのマイクロプラスチックデブリを摂取した海鳥では、一部の病原体や抗生物質耐性菌、プラスチック分解微生物が増加するなど、腸内マイクロバイオームに変化が見られる場合があることを示す論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。今回の知見は、マイクロプラスチックの摂取による海鳥の健康への潜在的な影響を浮き彫りにしている。
野生の海鳥はスケールの大きなルートで渡りを行うものが多く、マイクロプラスチックデブリを摂取することが知られている。とりわけ海洋環境において、プラスチック汚染は、腸内マイクロバイオームの変化によるものなど、さまざまな形で動物に悪影響を与えることがこれまでに明らかにされている。しかし、野鳥に関してその影響が立証されたことはなく、そのマイクロバイオームに対するマイクロプラスチック摂取の潜在的影響は、いまだ不明となっている。
Gloria Fackelmannたちは、北大西洋で採集された2種の海鳥(コリーミズナギドリ58羽およびフルマカモメ27羽)に関して、腸内マイクロバイオームと腸内のプラスチック量を調べた。マイクロプラスチック摂取のレベルと腸内マイクロバイオームの多様性および構成との相関を検討した結果、マイクロプラスチック摂取のレベルの高さが、特に腸内マイクロバイオーム構成の変化と関連していることが明らかになった。個体のプラスチック摂取が高レベルなほどマイクロバイオームの種多様性が高く、害を及ぼし得る種が多かった。今回の知見は、プラスチックの摂取が腸内ディスバイオーシス(腸内マイクロバイオームで有害微生物が支配的となった状態)を招く可能性があり、野生の海鳥の健康に影響を与えると考えられることを示唆している。
doi:10.1038/s41559-023-02013-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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