生態学:「wood-wide web」のエビデンスを調べる
Nature Ecology & Evolution
2023年2月14日
「wood-wide web」の異称を持つ共有菌根ネットワーク(common mycorrhizal network)と、それが森林で担っている役割に関して、引用の偏りと結果の過剰解釈が誤解を導いている可能性があると主張するPerspectiveが、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。文献の見直しと引用の分析に基づくその知見は、菌根菌のネットワークに関する3つの一般的な主張が科学的なエビデンスによる十分な支持を欠くことを示唆している。
森林の樹木を含めて、植物種には菌根菌との協力から利益を得ているものが多い。菌根菌は植物の根に存在し、林床のもとで巨大なネットワークを展開している。樹木は、そうした菌類のネットワークを介して、例えば、傷害を受けたとき若木に警告シグナルを送るなどの方法で、互いに意思疎通を行うことができるとする言説が、最近は一般メディアや科学文献をにぎわせている。しかし、そうしたネットワークの役割に関しては議論が続いている。
Justine Karstたちは、common mycorrhizal network(CMN)に関するメディアや科学文献からの3つの一般的な主張のエビデンスを分析した。その結果、森林にはCMNが大きく広がっているという主張、そしてCMNが資源を輸送したり実生の成長を強化したりしているという主張については、野外研究の結果にばらつきがあること、別の説明があること、あるいは限定的過ぎて一般化が支持されないことから、支持が不十分であることが明らかになった。また、成長した樹木がCMNを介して若木と意思疎通を行うという主張は、査読や発表が行われたどのエビデンスにも支持されないことが分かった。Karstたちは、引用を調べるために、CMNの構造に関する593本、およびCMNの機能に関する1083本の論文が、初期の18本の有力論文の知見をどう参照したのかに着目した。その結果、根拠のない記述を生む引用の比率が、CMNの構造に関しては25%、CMNの機能に関しては50%近くまで上昇したことが分かり、前向きな影響の引用への偏りも示された。
Karstたちは、CMNの前向きの影響に関する主張は利用可能なエビデンスにつながっていないと結論付けた。そして、こうしたネットークを調べるためさらに研究を行う必要があると指摘している。
doi:10.1038/s41559-023-01986-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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