Research Press Release

進化学:3500万年の進化をたどる上で役立った反芻動物の内耳

Nature Communications

2022年12月7日

反芻動物の内耳の形状を用いて数百万年間の草食性哺乳類の進化を調べる研究によって得られた知見を記述した論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、シカ科動物とウシ科動物の多様化、生息地の気候、新しい生息地への拡散を内耳の形状の多様性と関連付けている。

内耳は、動きや向きを感知するため、絶滅した動物の敏捷性を推測する際には、内耳の形状や大きさに関する情報が利用されてきた。内耳の骨である骨迷路は、非常に高密度で、化石記録において十分に保存されているため、数百万年にわたる哺乳類の進化の諸側面を調べるために利用できる。

今回、Bastien Mennecartたちは、3500万年にわたる反芻動物の進化という文脈で、現存種と化石種(キリン、シカ、ウシ、ヒツジ、ヤギを含む)の内耳の骨(合計306点)を調べた。今回の研究では、3次元X線データを用いて骨の形状の測定が行われた。その結果、内耳の形状に機能と無関係の小さな変動があり、これが反芻動物の新しい種の進化に対応していることが分かった。例えば、シカの内耳の変化の加速は、鮮新世-更新世(約300万年前)からのシカの新種(19種)の進化に対応している。いくつかの分類群では、内耳の形状の変動が、全球気温の変化にも対応していた。Mennecartたちは、重要な感覚系である内耳に関しても、わずかな形状の変化が気候や進化史を反映している可能性があると結論付けている。

今回の研究で得られた知見は、内耳が進化を解明する手掛かりを得るためのツールとなる可能性を示し、他の分類群において内耳の形状の非機能性変化の影響を調べる研究をさらに実施する必要性を裏付けている。

doi:10.1038/s41467-022-34656-0

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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