進化:ペンギンの進化に関する新知見
Nature Communications
2022年7月20日
ペンギンの進化に関する新たな知見を発表する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究によって得られた知見は、ペンギンがどのように海洋環境に移ったのかという点と地球上で最も過酷な環境にどのように適応できているのかという点を理解する上で役立つ。
ペンギンは、6000万年以上前に出現し、海洋に高度に特化したボディープランを持つようになった。また、ペンギンは、極域に氷床が形成されるまでに飛行能力を失い、翼を使って海に飛び込めるようになっていた。これまでの研究で、ペンギンの現生種の多様化が明確に示されたが、サンプリングの問題のために十分な研究が行われておらず、絶滅種を統合できていない。
今回、Theresa Coleたちは、全てのペンギンの現生系統と最近絶滅した系統のゲノムデータと化石から得たデータを組み合わせたデータセットを分析して、ペンギンの進化史を再構築した。その結果、ペンギンの多様化は、全球的な寒冷期と温暖期の気候振動によって引き起こされ、南大洋全体でそれぞれのペンギン種の個体数が減り、その後増加したことが明らかになった。Coleたちは、ペンギンの進化速度がこれまでに観察された鳥類の中で最もおそく、進化速度が、環境温度と負の相関関係にあるという考えを示している。また、今回の研究では、ペンギンのさまざまな系統について、個別遺伝子の進化過程を調べて、体温調節、酸素化、潜水、視覚、食餌と体サイズに関与している可能性のある遺伝子が同定された。Coleたちの解析では、ペンギンの祖先種において、色覚と視感度が、海洋の青い環境光に合うように調整されたことが示唆されている。
Coleたちは、南大洋でペンギンの生息地が限定されていることと現在の南大洋の温暖化速度を考えると、今回の研究によって得られた知見が、近い将来のペンギンの適応能力を危ぶむ内容になっている点に注意を要するとしている。
doi:10.1038/s41467-022-31508-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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