気候変動:極端な大気状態のために南極の棚氷がもっと脆弱になっている
Communications Earth & Environment
2022年4月15日
2000~2020年に南極半島のラーセン棚氷周辺で起こった氷山の分離(カービング)とそれによる新たな氷山の形成について、その60%は極端な大気状態が引き金になっていたことを明らかにした論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。この知見から、温暖化の将来予測を前提とすると、これと同じ一連の過程によってラーセンC棚氷が崩壊する危険にさらされる可能性が示唆されている。
南極における棚氷の崩壊事象は、大陸の氷の減少を加速させ、海水準上昇の一因になると考えられている。「大気の川」とは、大気中で大量の水蒸気の細い帯が川のように流れる現象をいう。こうした大気の川は、亜熱帯や中緯度帯で発生し、熱波や海氷の融解、海洋うねりを引き起こし、氷山のカービングや棚氷の崩壊につながることがある。最近の数十年間には、南極半島のラーセンA棚氷とラーセンB棚氷が、それぞれ1995年と2002年に大きく崩壊した。これらの崩壊事象は、氷表面の融解と暴風雨による波浪に伴うストレスと関連付けられている。
今回、Jonathan Willeたちは、南極大陸の棚氷に対する大気の川の影響を調べるために、2000~2020年の間にラーセン棚氷で起きた計21回のカービング事象と崩壊事象を特定した。Willeたちは、大気の川の検出アルゴリズムを用いて、そのうちの13回のカービング・崩壊事象で、発生までの5日間に強力な大気の川が上陸していたことを明らかにした。
Willeたちは、今後の氷床安定性モデルでは、平均的な状態だけに依存するのではなく、大気の挙動の短期的な極端事象も組み込む必要があると主張している。
doi:10.1038/s43247-022-00422-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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