Research Press Release

生態学:花粉媒介者は小規模農家の健康と収入を支えている

Nature

2026年5月7日

ネパールの農村地域において、受粉昆虫(花粉媒介昆虫)は家計収入の40%以上、および主要な栄養素摂取量の大部分(たとえば、ビタミンA摂取量の20%以上)を担っていることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この研究は、花粉媒介者と人間との関係が、環境と人間の健康の両方を維持するうえできわめて重要であることを示している。

おもに生息地の喪失や人為的な気候変動によって引き起こされる花粉媒介生物の減少は、重要な栄養豊富な作物の収量や消費量を低下させ、ひいては死亡率や疾病の増加につながる可能性がある。しかし、生態系内のどこでこうした影響が現れるかを正確に予測することは困難であり、花粉媒介生物の減少に対処するための対策を講じることは容易ではない。

Thomas Timberlakeら(ブリストル大学〔英国〕)は、ネパールの10の小規模農家コミュニティーに暮らす776人の食事内容、栄養状態、農業慣行、および社会経済的状況を調査し、彼らの栄養と生計を支える花粉媒介者の種を記録した。その結果、昆虫による花粉媒介が農業収入の44%、ビタミンA、葉酸、およびビタミンEの摂取量の20%以上を直接支えていることが判明した。続いて、著者らは、花粉媒介者のコミュニティーの変化が人間の栄養および生計にどのような影響を与えるかを、3つの主要なシナリオ(「極端なシナリオ」(地域の受粉者の完全な消失)、「現状維持シナリオ」(地域のミツバチデータにもとづく2030年までの減少の控えめな推定)、および「回復シナリオ」(受粉が収量を制限する要因とならないよう受粉サービスを積極的に管理する))の下でモデル化した。すべてのシナリオにおいて、花粉媒介者の減少は栄養素摂取量および世帯収入の減少と関連しており、ビタミンA、ビタミンC、葉酸、およびカルシウムが最も大きな影響を受ける栄養素であった。極端なシナリオおよび「現状維持」シナリオでは、花粉媒介者の喪失により、2030年までに農業世帯収入がそれぞれ44%、14%減少すると予測された。しかし、回復シナリオでは、世帯収入は15%増加し、微量栄養素の摂取状況も改善され、より多くの人々が主要な微量栄養素を十分な量摂取できるようになると予測されている。

本研究で示された枠組みは、収入および栄養の両面において、人間が花粉媒介種に依存していることを明確に示している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 15(陸の豊かさも守ろう)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases)」をご覧ください。

Timberlake, T.P., Sapkota, S., Saville, N.M. et al. Pollinators support the nutrition and income of vulnerable communities. Nature (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-026-10421-x
 

doi:10.1038/s41586-026-10421-x

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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