宇宙生物学:地球外の土壌を模した環境で生命が生き残る可能性を発掘する
Scientific Reports
2026年3月6日
月面および火星を模擬した土壌における生命の生存能力を調査した結果を報告する2つの論文が、オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載される。1つの研究では、月面を模擬した土壌を共生菌類およびミミズ由来の堆肥の両方で処理すると、その土壌で生育するヒヨコマメの繁殖率が大幅に改善されることが示唆されている。また、別の論文では、一部の微生物が大気から十分な水分を吸収し、火星の大気湿度レベルに相当する火星を模擬した土壌で生育できる可能性が示唆されている。
月面の土壌(学術的には月面レゴリス〔月の砂〕と呼ばれる)は、アルミニウムや亜鉛など特定の金属を多量に含むため、水の浸透が困難で、地球の土壌に見られる微生物叢も欠如していることから、健全な植物の生育を支えることができない。これまでの研究では、月面の土壌の肥沃度を改善する複数の方法が検討されてきたが、処理を施した土壌で育てられた植物は、生育不良や葉の黄変など、さまざまなストレス症状を示すのが一般的である。
Jessica Atkinら(テキサスA&M大学〔米国〕)は、月面を模擬した土壌サンプルを用いてヒヨコマメ(Cicer arietinum)を栽培した。土壌は、2通りの方法で処理された:1つは、バイオ廃棄物を分解するシマミミズ(Eisenia fetida)から生成されるミミズ堆肥(vermicompost)を異なる濃度で添加する方法、および各濃度サンプルの半数にアーバスキュラー菌根菌(AMF:arbuscular mycorrhizal fungi)を植え付ける方法である。地球上では、AMFは土壌の栄養循環特性を改善し、植物が吸収する可能性のある有害金属の量を減らし、土壌を固めて侵食を減らすタンパク質を生成する。著者らは、その後、ヒヨコマメの種子生産量と重量、ならびに植物の高さと根の質量を測定した。
著者らは、AMFとミミズ堆肥の両方で処理されたサンプルでのみ、ヒヨコマメが開花し、種子を生成できることを発見した。100%市販培養土で育てた対照群と比較すると、月面を模擬した土壌で処理した植物の種子数は著しく少なかった。しかし、ミミズ堆肥を25%および50%添加した土壌で育てた植物の平均種子重量は、対照群と同等であった。AMF処理された植物は、未処理の植物より著しく高い乾燥茎および根質量を示し、植物の成長の改善が確認された。
著者らは、地球の土壌再生戦略が月面でも有効である可能性を示唆している。ただし、月土壌シミュラントを一定の割合含んだ土壌で栽培したすべての植物は、対照群と比較してストレスの兆候を示した点に注意が必要である。
別の研究では、Jyothi Raghavendraら(ノーザンブリア大学〔英国〕)は火星を模擬した土壌中の微生物の生育条件を調査した。60日間、模擬土壌500ミリグラム中のDNA質量を測定した。模擬土壌は、無菌環境下で、火星の条件に相当する34%の大気湿度で保管された。著者らは、DNA質量が30日目まで増加したことを発見した。これは、過酷な環境にもかかわらず、土壌にもともと存在していた微生物が増殖したことを示している。しかし、測定されたDNA質量は60日目までにゼロまで減少していた。Raghavendraらは、この結果が火星における微生物の生息可能条件を決定する実験に役立つかもしれないと主張している。
- Article
- Open access
- Published: 05 March 2026
Atkin, J., Pierson, E., Gentry, T. et al. Bioremediation of lunar regolith simulant through mycorrhizal fungi and plant symbioses enables chickpea to seed. Sci Rep 16, 7498 (2026). https://doi.org/10.1038/s41598-026-35759-0
- Article
- Open access
- Published: 05 March 2026
Raghavendra, J.B., Zorzano, M. & Martin‑Torres, J. Growth of microorganisms in a Martian regolith simulant at reduced water activity. Sci Rep 16, 7499 (2026). https://doi.org/10.1038/s41598-026-35595-2
doi:10.1038/s41598-026-35759-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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