物理学:ガラスの振る舞いを調べるAIマップ
Nature Physics
2020年4月7日
機械学習を用いることで、さまざまな温度と圧力の制約の下でのガラスの振る舞いを、ガラスを作っている個々の粒子の最初の位置のみに基づいて予測できると報告した論文がNature Physics に掲載される。今回の知見によって、粉粒体、コロイド懸濁液、生物の細胞などのさまざまな系の力学的性質をより深く理解できる可能性がある。
ガラス質系は、固体として振る舞うことが多いが、微視的なレベルでは液体のように見える。つまり、ガラス質系の粒子は、不規則に配置されているのである。ガラスのダイナミクスが極めて遅いことの正確な原因の解明は、かねてから物理学と材料科学が直面している課題となってきた。
今回、Victor Bapstたちは、グラフニューラルネットワークと呼ばれる種類の機械学習モデルを使って、ガラス質系のダイナミクスを予測した。そして彼らは、ガラス質系の特徴とそれに対応する物理的特性を、その系の粒子の種類と位置だけを入力として使って学習するアルゴリズムを開発した。最も注目すべきなのは、この方法が、すぐに近くにある粒子間の相互作用と遠く離れた粒子間の相互作用のどちらも捉えることである。従って、このアルゴリズムは、再配置する粒子の位置と動きを、さまざまな温度圧力、密度の範囲で非常に長い時間スケールにわたって予測できので、その性能は、この問題の研究に使われる既存の機械学習法より優れている。
著者たちは、このアルゴリズムは、ガラス以外の他の系に適用するのに十分ロバストである可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41567-020-0842-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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