【動物行動学】白い羽衣は目くらまし
Nature Ecology & Evolution
2019年9月3日
満月のもとで、メンフクロウの白い羽衣は、獲物が立ちすくむ時間を長くし、それによって獲物を捕らえやすくしていることを明らかにした論文が掲載される。
月光は、個体の食餌を発見する能力を変えたり、動物が身を隠したままにしたりするなど、動物の模様の働きを変化させている。また月は、夜の世界をさまざまな光にさらしており、それが夜行性動物の配色の進化を促進している可能性もある。
今回、Alexandre Roulin、Luis San Joseたちは、GPSトラッカーを利用して、異なる月齢のもとでの赤色および白色のメンフクロウの狩猟成功率をモニタリングした。その結果、白いフクロウは、月のある夜には獲物からの視認性が高いにもかかわらず、赤みが最も強くて目につきにくいと考えられるフクロウよりも、齧歯類の狩猟に成功する確率が高いことが分かった。
研究チームは、白いフクロウの成功率が高かった理由を明らかにするため、ジップワイヤーで剥製のフクロウを飛ばし、メンフクロウの主要な獲物であるハタネズミの驚愕反応を評価した。すると、白いフクロウの羽毛は光を反射しており、ハタネズミの生来的な明るい光への嫌悪を利用している現象が観察された。ハタネズミは立ちすくんでしまうため、フクロウはハタネズミの捕獲が容易になると考えられる。
メンフクロウで白と赤の両方のタイプの羽衣が維持されていることはこの現象によって説明されるかもしれないと、研究チームは考えている。白いメンフクロウが有利になるのは、満月のもとなど、特定の条件でのみである。それ以外の状況では、白い羽衣は、ハシボソガラスなどの厄介な競争相手から容易に発見される原因となる。
doi:10.1038/s41559-019-0967-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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