Research Press Release

【医学研究】ブタの損傷した肺を再生する

Nature Communications

2019年5月8日

体外臓器維持システムによってブタの損傷した肺を再生できたことを報告する論文が、今週掲載される。この予備的知見は、損傷した肺を修復して臓器移植に利用し得ることを示唆している。

胃吸引(胃の内容物が気道に入ること)は、肺が損傷する一般的な症状であり、損傷した肺は移植に適さなくなる。移植用臓器は世界的に不足しているため、損傷した肺を再生する方法があれば、移植に適した臓器のプールを充実できる可能性がある。

今回、Matthew Bacchettaたちの研究グループは、激しく損傷した肺を再生して移植判定基準に適合させられるかを調べた。Bacchettaたちは、8匹のブタで胃吸引を再現した後、損傷した肺を移植先のブタの循環器系に接続することによって体外システムで維持した。この交叉循環システムを用いることで、ドナー肺がブタドナーの体外で最大36時間にわたって維持され、一連の治療介入を行う時間的余裕が生まれた。この体外臓器維持システムは、損傷肺の再生と機能改善を実現し、こうして再生された肺は、移植判定基準に全て適合していた。

再生された肺の移植後の機能容量、およびこの方法の安全性を確認するためには、さらなる研究が必要となる。また、ヒトの臓器移植に必要な免疫抑制が肺の修復に及ぼす影響を評価するための研究も必要とされる。

doi:10.1038/s41467-019-09908-1

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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