【生物学】人間の食料がクマの冬眠と細胞老化に影響を及ぼす可能性
Scientific Reports
2019年2月22日
人間の食料を餌とするクマは、冬眠期間が短く、細胞の老化が進むという研究結果を示した論文が、今週掲載される。今回の研究は、人間の食料の入手可能性が、動物の老化に対して生物学的レベルで負の間接的影響を及ぼす可能性のあることを理解する上で役立つ。
野生動物が人間の食料(食品廃棄物、作物、家畜など)を入手しやすくなっていることは、その動物の冬眠時期の遅れや冬眠期間の短縮と結び付けられてきたが、人間の食料を摂取したことが野生動物の健康と寿命にどのような影響を及ぼすのかは、ほとんど分かっていない。
今回、Rebecca Kirbyたちの研究グループは、アメリカグマ(Ursus americanus)が人間の食料を餌にすることと冬眠、細胞老化の関係を調べた。Kirbyたちは、2011年夏から2015年冬にかけて米国コロラド州ドゥランゴ近郊で30頭の雌グマの追跡調査とサンプル調査を行った。その結果、夏季に人間の食料を多く摂取した個体は、その冬の冬眠期間が短かったことが判明した。そして、冬眠期間が短くなったクマでは、テロメアの短縮速度が上昇していた。テロメアとは繰り返し配列を持つDNAを含む染色体末端部の構造で、細胞が分裂するたびに短くなるため、細胞老化のマーカーとして用いられることがある。
以上の知見は、ヒトの食料を多く摂取するクマが、冬眠に関連した適応度上の長期的利益の一部(例えば、細胞老化の緩和)を失う可能性があることを示唆している。Kirbyたちは、人間の活動が継続的に拡大し、人間の食料を入手しやすくなったことが野生生物の行動を変化させ、分子レベルで影響を及ぼしている可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41598-019-38937-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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