がん細胞の変異量から免疫療法の転帰を予測できるかもしれない
Nature Genetics
2019年1月15日
がん細胞の変異量が免疫チェックポイント阻害薬療法を受けた患者の生存可能性と関連していることが、大規模な研究によって明らかになった。この関連は多くのがん種で見られるため、免疫療法によく応答する患者を予測する上で役立つ可能性があることが示唆された。
免疫チェックポイント阻害薬は、ある種のがんにおいて、がんと闘うはずの体の免疫応答ががんにより抑制されているのを阻止するために投与される。しかし、免疫チェックポイント阻害療法の結果には、患者によってばらつきがある。従って、免疫療法に対する応答に見られる個人差を正確に理解することが、がん治療の重要な目標の1つである。
今回、Timothy Chan、David Solit、Luc Morrisたちの研究グループは、病気の進んだがん患者を対象に、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた1662人と、その治療を受けていない5371人の患者の臨床データとゲノムデータを評価した。
今回の研究では、転移がん患者に由来する腫瘍のがん関連遺伝子群の塩基配列が決定され、それぞれの患者の腫瘍に含まれる変異の量(腫瘍変異負荷ともいう)が定量化された。その結果、変異量が多い腫瘍の患者の方が、免疫チェックポイント阻害薬療法を受けた後の全生存率が高いことが分かった。ただし、生存率の向上と関連している変異量の閾値は、がん種によって異なると考えられる。
以上の知見は、さまざまながん種に関して免疫チェックポイント阻害薬療法に対する患者の応答を予測する際に、腫瘍変異量が有益な測定基準となる可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41588-018-0312-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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