【腫瘍学】単糖類のマンノースによってマウスの腫瘍の成長を抑制できるかもしれない
Nature
2018年11月22日
単糖類のマンノースの単剤投与または化学療法との併用投与によってマウスの腫瘍の成長が遅くなることを報告する論文が、今週掲載される。この方法は有望だが、この知見を確認するためにはさらなる研究が必要となる。
多くの腫瘍細胞は代謝が変化して、グルコースの取り込みが多くなるため、異なる種類の糖類を投与することで腫瘍の成長に影響を及ぼせないかという疑問が生じている。
今回Kevin Ryanたちの研究グループは、単糖類のマンノースが腫瘍細胞の成長に及ぼす影響を調べ、マンノースによって腫瘍細胞の成長が抑制されたことを報告し、マンノースがグルコース代謝を阻害している可能性があるという考えを示している。また、マンノースを化学療法薬のシスプラチンまたはドキソルビシンと併用投与すると、細胞死が有意に増えた。さらに、担がんマウスにマンノースを投与する実験では、栄養チューブから週3回投与する方法と飲料水に混ぜて継続的に提供する方法が用いられた。マンノースによるこの治療法は、忍容性も良好で、単剤投与の場合もドキソルビシンとの併用投与の場合も、腫瘍の成長が抑制されると判定された。
マンノースに対する腫瘍細胞の感受性は、ホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)という酵素の濃度と逆相関していた。Ryanたちは、ヒトのさまざまなタイプの腫瘍細胞(卵巣がん、腎臓がん、乳がん、前立腺がん、大腸がん)のPMI濃度を検査し、異なる腫瘍タイプ間でも同一腫瘍タイプ内でも細胞のPMI濃度に差異が生じていることを報告している。特に、大腸の腫瘍細胞のPMI濃度は低いことが判明し、マンノースに対する感受性が他の腫瘍タイプより高いことが示唆されている。さらに、大腸がんマウスモデルにマンノースを投与すると、腫瘍の発生数が有意に減った。
Ryanたちは、マンノースによる治療法が、多くのがんにおける腫瘍の成長を標的とする簡便で安全な方法になり得ると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0729-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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