Research Press Release

シェードボールに落ちる影

Nature Sustainability

2018年7月17日

貯水池の水の蒸発を減らすために使われるプラスチック製の黒いシェードボールは、ボールの壁の厚さに応じて少なくとも0.2~2.5年使い続けなければ、水の保全を実現できないことを報告する論文が、今週掲載される。この知見は、手早くて簡単な水管理技術の実質的な持続可能性に影を落とす。

野外の貯水池からの蒸発損失は、農業、工業、家庭による全球の水消費量の25%に達しており、気候変動の下でこの問題は悪化すると予想されている。そのため水管理者は、水保全の新たな解決策を開発する必要に迫られている。最近の米国カリフォルニア州の深刻な干ばつの蒸発による水の損失をできる限り少なくするため、2015年8月には直径約10 cmの中空の高密度ポリエチレンボール9600万個以上がロサンゼルスのアイバンホー貯水池に投入された。

今回E Haghighiたちは、ウォーターフットプリント法を用いて、この解決策の持続可能性を評価している。この方法では、ポリエチレンボールのサプライチェーン全体にわたって消費されたり汚染されたりした水の全体積も検討された。その結果、このボールによって毎年115万立方メートルの水が損失を免れるが、ボールの製造には、使われるボールの壁の厚さに応じて毎年約25万~290万立方メートルの水が費やされることが分かった。従って、シェードボールを十分な時間貯水池に入れたままにしておかない限り、シェードボールによってロサンゼルスで損失を免れた水の量は、米国や世界の他の地域で消費された水の量と同等あるいはそれ以下になる可能性がある。Haghighiたちは、シェードボールなどの水管理の手早い技術的解決策は、持続可能性の統合解析によって、実行可能性を総合的に評価する必要があると結論付けている。

doi:10.1038/s41893-018-0092-2

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度