気候目標によって持続可能な開発目標の達成にかかる費用が増える可能性がある
Nature Energy
2018年6月19日
気候目標を達成するようエネルギーシステムを変えると、持続可能な開発目標のうち「全ての人々にエネルギーアクセスと食料安全保障をもたらす」という目標を達成するのにかかる費用が増える可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。化石燃料の利用から脱却すると同時にこうした目標を達成するのにかかる予想費用は、年間数百億ドルになる可能性がある。
エネルギー費は下落しているが、太陽光発電装置や風力タービンなどの低炭素エネルギー技術は、まだ比較的高価である。同量のエネルギーを、低炭素技術を用いて全球に供給するのにかかる費用は、現行の主に化石燃料ベースのシステムより、年間2700億ドルも多くなる可能性がある。さらに、清浄水の供給と公衆衛生にかかる費用は年間100億ドル、食料安全保障にかかる費用は年間390億ドル増えると考えられている。
今回D McCollumたちは、6つの異なるグローバル経済・環境・エネルギーシステム統合モデルを用いて、こうした見積もりを導き出した。このモデルは、低炭素エネルギーインフラを全世界に構築するのに必要な資本コストを明らかにしており、また、異なるモデルを統合することで、あらゆる可能性をカバーする幅広い見積もりを得ることが可能になった。
こうした見積もりから、政策立案者はエネルギーシステムの移行の可否を検討するための定量的基礎を得られる。またMcCollumたちは、低炭素技術への移行には極めて高い費用がかかるだろうという懸念も払拭しており、世界の開発金融の規模を考慮すると、エネルーシステムの変化は必要なだけでなく、無理のない費用で行えることを示している。
doi:10.1038/s41560-018-0179-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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