Research Press Release

抗生物質を食べる細菌

Nature Chemical Biology

2018年5月1日

細菌の中には、抗生物質ペニシリンを食物として利用できるものがいる。その仕組みを明らかにした論文が、今週掲載される。このような微生物がペニシリンの存在下でどうやって増殖するかを理解することは、危険な抗生物質耐性株の拡散への対処に役立つ可能性がある。抗生物質の存在下で生存する微生物(汚染土壌などにみられる)は、拡散して人畜の健康を脅かすと考えられるが、一部の細菌はこの能力をもう一段進歩させ、実際に抗生物質を食物として利用することができる。

Gautam Dantasたちは、一部の土壌細菌がペニシリンを利用可能な断片に分解する際に働く酵素と遺伝子を同定した。研究チームは、この種の細菌が、まずβラクタマーゼという酵素を使ってペニシリンを不活性化させることを発見した。これは、耐性細菌株に共通の戦略である。しかし、抗生物質を食べる今回の細菌には、この研究で新たに発見された特別な酵素も備わっており、不活性化したペニシリンをさらに分解し、食物として利用可能な断片とする。

研究チームは、今回の研究で同定された酵素や遺伝子を利用することにより、新規抗生物質の合成や抗生物質汚染土壌の浄化が実現される可能性があると結んでいる。

doi:10.1038/s41589-018-0052-1

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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