【気候科学】地球温暖化の長期予測の幅を絞り込む
Nature
2018年1月18日
二酸化炭素の増加に対する地球の応答を評価する際に用いる重要な数値指標である平衡気候感度(ECS)の新たな推定値を示した論文が、今週掲載される。今回の分析では、過去に発表された極めて値の高いECSの推定値は不適切なものと断定し得ることが示唆されている。
ECSは、大気中のCO2濃度を2倍にすると発生すると考えられる全球平均気温の上昇と定義されており、気候モデルについて議論し、比較するための重要なツールであり、気候変動に関する国際協定などの政策論争における重要項目だ。ところが、ECSの推定値については、これまでにさまざまな値が算出されており、それらの折り合いをつけることが難題となっていた。
ECSの推定値を算出する試みの多くは、過去の温暖化記録や過去の気候の再構築を用いていた。しかし、過去の温暖化記録による方法は、海洋による熱の取り込みに伴う不確実要因や正味の放射強制力に対するエーロゾルの寄与など数々の要因に影響されるため、推定値の精度が影響を受けることがある。今回のPeter Coxたちの論文には、温暖化傾向自体ではなく、過去に観測された気温変動に基づいたECSの確率分布が示されている。Coxたちは、ECSの推定幅を摂氏2.2~3.4度とし、気候変動に関する政府間パネルの推定幅である設置1.5~4.5度と比べてECSの不確実性が60%小さくなった。また、Coxたちの方法を用いることで、摂氏4.5度超、摂氏1.5度未満といったECSの推定値は不適切なものとほぼ断定することができる。
doi:10.1038/nature25450
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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