【考古学】ヒトが初めてオーストラリアに到達したのは約65,000年前だった
Nature
2017年7月20日
ヒトがオーストラリア北部に初めて到達したのは約65,000年前だったとする新たな考古学的証拠を示した論文が、今週掲載される。これは、過去にオーストラリア北部の同じ遺跡で実施された発掘調査によって推定された年代よりも古く、オーストラリアの大型動物相が絶滅する前だったことになる。
ヒトが初めてオーストラリアに到達した年代については論争があり、これまでに発表された推定年代は、約47,000年前から約60,000年前まで幅がある。この論争で極めて重要な意味を持っているのが、知られる限りでオーストラリア最古のヒトの居住遺跡であるMadjedbebe岩窟住居(オーストラリア北部)だ。過去に決定されたこの遺跡の年代をもとにして、現生人類がオーストラリアに出現したのが50,000~60,000年前と推定されたが、この遺跡で見つかった人工遺物の年代決定に懸念が表明されていた。
今回、Chris Clarksonたちの研究グループは、Madjedbebe岩窟住居での新たな発掘作業の結果、2015年の発掘で見つかった人工遺物が高密度で分布する層の最下層から約11,000点の人工遺物(剥片石器、砥石、知られる限りで最古の刃先が研削された手斧など)が出土したことを報告している。Clarksonたちは、こうした人工遺物が発見された位置を注意深く評価し、人工遺物が発見された堆積物の年代と対応するようにした上で、高度な年代決定法と用いて堆積物の年代を推定した。Clarksonたちの解析結果では、この遺跡が層序学的に正確なことが確認され、深くなるほど古くなる一般的なパターンがあることが明らかになり、これまでより正確な年代決定が行われた。発掘現場で最も深い部分の年代は、約65,000年前と推定され、この地域にヒトが初めて居住した年代が約5,000年も昔にさかのぼった。
この結果は、現生人類がアフリカから出て南アジアに分散した年代の推定として、これまでで最も古いものとなり、オーストラリアで大型動物相が絶滅する前に現生人類がオーストラリア大陸に到達していたことを示している。オーストラリアでの大型動物相の絶滅については、ヒトがどのような役割を果たしたのかが問題となっている。
doi:10.1038/nature22968
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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